トランプ次期大統領に関する論議を巡って(4)
話をリアル・ポリティックの場に移してみよう。
トランプは、次期大統領に当選するやいなや、それまでの過激な発言とは裏腹な、従来の共和党の政策に近い「常識的」政策案をちらつかせている。そしてトランプ当選直後に大幅な下落を見せた株式市場は今度は一気に上昇した(こんな思惑で巨額なカネを動かしている連中が国の経済を牛耳っているのだからたまったものではないのだが)。これにしたがって、マスコミや各国のトップは、何が起こるか分からないという不安から一歩落ち着き初めて、トランプとうまくやっていく方向をまさぐり始めた。
しかし、他方では、ニューヨークやロサンゼルス、ポートランドなど全米各地で「トランプはわれわれの大統領ではない」というスローガンでトランプ政権反対運動が持ち上がっている。マスコミやトランプ陣営はこれに対して、「民主的選挙で選ばれた大統領に反旗を翻すのはかえって分断を押し進めることになる」と言っている。
いまトランプ政権の人事が進んでいる最中なので確かなことは言えないが、おそらくトランプは、共和党の主流派と似たような「現実的な」政策を打ち出さざるを得なくなるだろう。それに対しておそらく、反トランプ派はもちろんのこと、トランプに投票した人々も期待外れとして反発することになるだろう。あの過激な発言はウソだったのか?選挙に勝つための方便でしかなかったのか?という反発である。
どちらにしてもトランプが政権を取ったことにより白人主義者や国粋主義者が自信を深めることで、外交的な困難や混乱はもちろんのこと、ますます国内の人種差別問題は深刻な様相になり、分断と混乱はますます激しくなるだろう。その分断と混乱がどのような形で展開するかはまだ予測できない。
したがってここではいたずらに感情的な行動に出る前に、階級的状勢の現実への冷静な分析的視点が必要であり、労働者階級を分断に導いている虚偽のイデオロギーに対して何が正しいかを理論的にあきらかにすることで、分断された労働者階級間の団結を再び取り戻すことができるような政治的能力が必要となるだろう。アメリカの労働者や若者たちはやがてはそうした方向にむかうと信じている。
そしてそれを「他の世界の出来事」として見るのではなく、結局われわれの日本はおろか世界中の差別と貧困に苦しむ人々が、その本来の社会的地位を取り戻すべき闘いの一環として見ることが必要なのだと思う。
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