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2016年6月19日 - 2016年6月25日

2016年6月25日 (土)

イギリスのEU離脱から見えてくるもの

 前回のブログ「労働者階級の右傾化を巡って」はイギリスの国民投票の結果が出る前に書いたものであるが、いま「離脱」が決まったことにより、その背景とこれから起こる問題について考えてみようと思う。

 「離脱」支持派はEU離脱に対する確信的予測を持っていたわけではなく、マスコミなどでの刺激的論調で「なんとなく」その方が自分たちのことを自分たちのクニでできるようになるだろう、という雰囲気的理由で票を投じた人々が大半であろう。だから「離脱」後の世界への不安が噴出したいま、もう一度国民投票を実施すれば結果は逆転するかもしれない。「民意」とはそれほどに不安定なものである。
 これは、「ポピュリズム」という雰囲気的状況を生みだす現在のマスコミや情報界による一つの結果であると同時に、労働者組織の指導部の堕落がもたらす労働者階級の「右傾化」の結果でもあり、それらが生みだした、次世代社会への展望を喪失した不満と不安の爆発の結果でもあると思う。
 マスコミ界やそれを支える広告業界は、商品が売れることを唯一の「善」として、いかに注目を集めるニュースを流すか、それによっていかに多くのスポンサーから広告料が獲得できるかしか考えていない。それが及ぼす結果に対してはまったく無責任である。そしてこれに対して「公共的利益の尊重」をぶつける支配層の側も、国家秩序の維持を看板にして「無責任なマスコミ」を非難し統制を加えようとする。 マスコミ側は報道の自由を楯に、「リベラル・インテリ層」を巻き込んでこの統制に抵抗する。労働者階級はこうした状況の中で生みだされる「ポピュリズム」に巻き込まれ振り回され続けている。
  そこでもう少し詳しく移民労働者について考えてみよう。国による生活水準の差が生みだす平均賃金の差は、その国での生活資料の価格の差であり、これはお金の掛かる耐久消費財等、高価な生活資料がなければ生活できない国と、そうしたものがなくとも生活ができる国との差といってもよいだろう。それは必要最小限の生活資料の価値の違いと、そうした生活資料を生みだすための労働に対する賃金も低いことの結果である(そのことがその国の産物を輸出する資本家階級には有利に働くのであるが)。
  ところが、そこに統一通貨がやってきて、それによって商品の流通が行われるようになれば、結果、労働賃金における統一通貨額の差として明白に客観化され、労働者は同じ労働時間働いても、より高い賃金がもらえる国に移住したくなるのは当然であろう。すでにこの段階で生活水準の低い国の労働者は「国境」というものの無意味さを理解しているはずだ。
 反対に、生活水準が高い国の労働者たちは、自分たちより安い賃金でも働く移民労働者が自分たちの賃金を引き下げ雇用を失わせる要因となることに反発し、その流入を防ぐためにより高い国境を要求する。一方、資本家階級にとっては、低賃金を受け入れる労働者の流入は大歓迎であろう。 そして「既得権を振り回す高給労働者(いわゆる中間層)」への無言の圧力が加わるようになる。 そうした国では労働組合は自国の労働者の立場を護るという形で動くため移民労働者は労働者組織には加われず、下層労働者層を形成する。そして労働者階級内部での排除と差別化が進む。テロの温床はこうして醸成される。
 中間層の労働者たちは明確な階級意識が乏しく、自らを「国民」として自覚しているので、多くはナショナリズム的方向に傾き、資本家側の攻勢やこうした労働者階級内部での対立が生む不満や不安をただ刺激的に取り上げるマスコミが「ポピュリズム」や「ナショナリズム」という状況を生みだすことにもなる。 そしてそれが「民主主義的」選挙で大きな影響力を発揮する。
 例えば、労働組合が、資本家側に「同一労働、同一賃金」をアピールするなら、それは当然にも移民労働者にも適用されるべきであり、ひいては同一通貨体制の国で働く労働者全体に適用されるべきであろう。その当然のアピールができないのはいまの労働者組織とくにその指導部が完全に階級意識を失っている証拠ではないか? 
問題はすでに国境を超えているのであり、それがどのような意味を持つのか真実が見えてくれば、労働者階級が闘うべき本当の相手が見えてくるはずだ。
 

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2016年6月24日 (金)

労働者階級の「右傾化」を巡って

イギリスのEU離脱を問う国民投票が世界中の投資家たちの注目を集めている。離脱ならポンド安となり、グローバル大企業がイギリスから撤退し、イギリス経済は危なくなるという見方である。一方で「離脱派」には現状に不満を持つ労働者階級が多く含まれている。現状では移民の数がどんどん増え続け、低賃金で働く移民労働者が増え、イギリス人労働者の賃金水準や雇用が下がるというわけだ。つまり投資家に代表される資本家階級はEU残留を望み、労働者階級は離脱を求めている比率が高いと言えそうだ。 昨今の政治状況は複雑で、「離脱・独立派」がいわゆるナショナリスト的右翼であるとは決めつけられないが、一般的傾向として、ヨーロッパの労働者階級は、現状に不満を持ち、それがEUによる締め付けのもとで移民抑止への対策ができないことへの不満として「EU離脱」という方向を求めているようだ。

 そしてアメリカの大統領選挙の前哨戦を見ても、労働者階級の生活の現状への不満が既存の民主党や共和党候補への不満という形で爆発し、トランプやサンダース支持という形で現れている。トランプは過激な発言で「アメリカ第一」をアピールし、既存の政党指導者にはないカリスマ的雰囲気を持っているということと、サンダースはこれまでアメリカでは「禁句」とされていた「社会民主主義」的政策を掲げ、「政治革命」を目指すことを主張しているからであろう。

 こうした傾向の背景には、「自由・平等・民主」を表看板としている欧米資本主義諸国の 労働者階級全体がいまの自分たちの生活状況に不満や不安を持ち、「なんとかしなければいけない」という意識を共通に持っていながら、そのはけ口を本来の意味での階級意識に結びつけられずにいるということであろう。
 その背景には、自分たちに働く場を与えてくれる資本家企業がもっと利益を上げられるようになり、雇用のチャンスやその分け前を労働者にも分配してくれること(トリクルダウン)を願う、という意識構造が根強く存在していることであろう。
これはひとくちに言えば「賃金奴隷根性」 である。「格差是正」「雇用の拡大」「賃金水準の向上」が最大の政治目標になっていることにもそれが現れている。
 本当の問題はこうである。
何故、大量の移民を生みだす中東での悲惨な状況が起きているのか? 
何故、そこから命からがら逃げ出してきた移民たちを、労働力商品市場での競争相手としか見ることができないのか? 
何故、あの悲惨な⒉回の世界大戦の反省として生まれてきたEUでの内部矛盾を、国境を超えた労働者階級の連帯の形成という方向ではなく、国境線を高くしてナショナリズム的に排除しようとする方向でしか解決しようとしないのか? 
そして何よりも、何故、全世界で社会のために働く人々が生みだした膨大な富を、一握りのグローバル資本家階級が独占し、その利益の奪い合いの闘いを展開している状況に圧倒的多数である全世界の労働者階級が団結して対抗できないのか? 
つまりとっくの昔に国境線を越えてグローバルに支配を拡大している資本家階級に対して各国の労働者階級が未だに一国内での「国民的利害」という形でしか対抗できないのか? である。

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