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2017年1月18日 (水)

「自由貿易」の矛盾を巡る問題

 イギリスはEU単一市場からの離脱を明確にした。モノやヒトの自由な往来ができた単一市場から離脱することでモノの行き来を犠牲にしても移民の流入阻止を優先した様である。

 アメリカのトランプもメキシコからの移民流入を阻止することを声高に叫んでいたが、この問題はこのブログでもすでに何回か書いたように、国による生活水準の差、つまりは労働賃金の差の問題が根源であろうと思う。
 これは世界的に見れば、資本主義経済体制の不均等発展に必然の結果であって、資本主義化が進んだ国では労働者の生活資料がすべて商品化されており、その回転(すなわち消費の促進)を資本蓄積の必要条件としているのに対して、資本主義化の遅れた国では生活資料の自給自足的部分が残存しているため、労働者の生活資料もすべて商品化されておらず、したがって安い労働賃金でも何とかやっていける状態になっているからであろう。
 しかし、もちろん国による労働賃金の違いはそればかりではなく、グローバル資本の搾取形態が国によって異なるという事情もあるだろう。
 例えば、「先進」資本主義国では、生活資料商品(これには食料・衣料品などと共に家電製品やクルマなども含まれる)の回転率を高めること、つまり「消費拡大」がその国での資本蓄積の要件となっているにも拘わらず、消費を拡大させるためには労働者の賃金を高くしなければならず、これによって今度はその国での「労働コスト」が上昇し、国内の労働力に頼って輸出で稼ぐ資本家としては国際市場で不利になる。したがって生活資料を労働賃金の安い国で生産させてそれを安く輸入すれば国内の生活資料商品の価格を低くすることができ、労働賃金の上昇も抑えることができる。しかしそれによって今度は国内での生活資料商品を生産していた企業の労働者は放逐され、サービス産業や観光産業などの非生産部門の資本に雇用されて生きるしかなくなる。
 一方、資本主義化の遅れた国々では、グローバル資本からの投資で工場が作られ、資本主義化によって農業などで生活できなくなった人々を低賃金労働者として雇用することができるようになる。しかもその工場でつくられる生活資料商品を「先進」国に輸出することで大きな利益を得ることができ、グローバル資本からその分け前を獲得できる。こうして「後発」資本主義国の国内市場も形成され、資本主義化が進む。これを資本家たちやその代表政府は「開発が進む」と言っているのである。(ちなみに安倍首相は我々の労働の成果である生活費から取り上げた税金を用いてこうした国々に多額の「支援」を拠出している)
 この状態では「先進」諸国の資本家は「後発」諸国の労働者の生活水準が低い方が都合が良いのである。しかし、一部の「後発」諸国では徐々に労働者階級が成長し、生活資料がすべて商品化されるようになると、今度はそれまでの賃金ではやっていけなくなってくる。そのため、労働賃金を上げなければならなくなり、したがってそれらの国々でも資本家達が国内市場の活性化を目指してそこから利益を上げようとするようになる。やがて一部の高賃金化した労働者(頭脳労働者や中間管理職など)や、市場の活性化に乗じて利益を上げた投資家や商人などは私財を蓄え「先進」諸国から高価な商品を買ったり海外へ観光旅行に出るようにもなる。こうしてその国での労働者の格差が拡大し、それらを平均して労働賃金の水準が上がっていったとしても、今度はそのことによってその国の国際市場での競争力は劣化していく。
 しかしさらに資本主義化の遅れた国々や紛争や戦争などで生活が疲弊した国の人々は生きるために「先進」諸国で働いて生活することを目指すようになる。そしてそれまで比較的自由に出入りのできたEU諸国やアメリカへの大量の移民の流入が起きる。
 こうした状況でNAFTAやTPPの様な多国間自由貿易協定で輸入関税を撤廃していこうとすれば、当然それらの国々での生活水準つまり労働賃金の水準の違いが大きな問題となってそれが結果的に産業構造の激変や雇用喪失といった問題に発展することは明白だ。
 要するに、資本主義経済体制において、世界中でモノとヒトの行き来の制限をなくそうとすることを、それぞれの国での生活水準の大きな差を維持したまま実行しようとすれば当然それぞれの国で労働者階級が何等の形で大きな犠牲を強いられることになるのだ。だから労働者達は危機感を強めポピュリズムを支持することにもなるのである。
 一方、それぞれの国々が関税障壁や移民制限を設け、自国の資本家の利益を優先しようとすれば、すでにグローバル化した資本主義経済体制はかならず行き詰まってしまうだろう。かつて20世紀の半ばに「ブロック経済体制」という状態が結局第二次世界大戦を引き起こすことになったことが思い起こされる。そうなれば労働者階級はもっと悲惨な目に遭うことになる。
 こういうジレンマにいまの世界資本主義体制は立たされているのであって、自国の資本家達が儲かれば労働者達もそのおこぼれを頂戴できると考えるのはもう止めた方がいいだろう。

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