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2017年1月 6日 (金)

人工知能の「物神化」をめぐって

 今朝の朝日新聞「我々はどこから来てどこに向かうのか」シリーズで「頭脳」と称して人工知能(AI)の進化について述べられている。この記事も他のマスコミの一般的傾向が顕著に顕れており、最近の AI技術の急速な進歩によって数十年後にはAIが人間の知能を超える「シンギュラリティ」が訪れるというものだ。そしていずれは人間の意識の内容をすべて外部のAIに移すことが可能になり、そうなれば人間の肉体と意識は切り離されて、肉体が死んでも意識は永遠に生きのびることができるようになるだろう、つまり人間はAI装置という機械に置き換えられてしまうだろうというものである。

 ここで問題なのは、人工知能がいつ誰によって何のために生みだされたものなのかである。人工知能は基本的に人間の道具である。しかし肉体的機能の延長としての道具ではなく、脳神経系機能の延長としての道具である。
 歴史を遡れば人類は道具を使うようになり道具を自ら生みだせるようになってから生物学的に急速に進化してきたといえる。特に頭脳はそれによって著しく進化した。しかし、本来道具は自分自身が置かれた状況においてその環境(他者という存在も含む)と自分との間に生じた不適合状態(問題)を解決するための手段として用いられ生みだされてきた。その意味で道具を用いた行為は目的意識的であり、その結果はある意味で自己と環境との関係の表現でもあった。
 ところが、人類の共同体が文明社会として発達し、そこに社会を支配する人々とその支配の元で様々な労働により実質的に社会を支える人々に分割されていった。そこに道具の意味に変化が生じたと考えられる。道具は支配される人々にとっては自分の生活を維持する手段でもあり、支配者の富や支配を維持するための道具でもあるようになった。
  そして資本主義社会が登場するに及んで、人々が生みだす富の私的所有の表象である貨幣や資本が物神化され、それを獲得することが社会的行為の目的とされるようになり、物神化された貨幣や資本の人格化である資本家達の富を生みだす手段として道具が位置づけられるようになった。
そしてこの過程で資本家の元に雇用されそれら資本家の所有する道具を用いて富を生みだす労働者は、その労働力を資本家に売り渡し日々資本家の富を生みだす労働を行うによってしか生きのびることができなくなった。そこでは労働者にとって道具は自分たちの目的を達成させる手段でもなく、それによって自己表現をすることもできない存在として自分たちを支配するものとなってしまった。
そしてその必然として「産業革命」が起きたのである。最初は肉体の延長としての機械が発達し、やがて20世紀になっていわば血管や神経系の延長である電気通信系機器が発達し、最後に20世紀後半になって脳の延長である人工知能が発達したのである。
 現代はその延長線上にあって、資本を生みだす道具としての機械やAIがまるで社会を支配しコントロールするかのようにとらえられるようになった。道具を生みだす技術の物神化である。AIは特にその特徴が顕著に顕れている。
 しかし、こうした形での道具の「進化」においてもそこに潜在する本質的な技術能力というものはおそらく将来的な人類の進化にとって必要不可欠なものとなるだろうことは確かである。しかし、その現実形態はいまの状態ではむしろ人類にとって破滅的な結果を及ぼしかねない。本質的技術力が人類にとって普遍的な力になりうるためには社会の成り立ちそのものが大きく変化しなければならないだろう。
 こうした背景のもとでAIの未来を考えることができないと、まるで人類がAIに乗っ取られてしまうかのような錯覚に陥ってしまう。資本やその物的形態にしか過ぎない機械やAIに奉仕することが生きることであり人類の普遍的姿であるなどと誤解してはいけない。AIが人類に取って代わってしまうなどという妄想はそういうところからしか生まれ得ない。
  一握りの人たちの富を増やすために働くのではなく、一人一人が自分のためにも他者のためにも働いて社会という共同体をともに支えていくことが本来の姿であり、道具はそういう社会でこそすべての人々にとって主体的な目的意識を実現させる手段なのであり、普遍的に人類を進化させる手段になり得るのだと思う。
 これが元人工知能学会のメンバーでもあった筆者の思いである。

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