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2017年2月12日 (日)

「雇用創出」という資本による錦の御旗に騙されるな

 安倍首相とトランプの会談が持たれた。「日本のクルマがアメリカで多数販売されているのにアメリカのクルマは日本であまり販売されない、不公平だ!」「多額の軍事費を掛けて日本を護ってやってるのに日本はそれに見合ったカネをだしていない!」と叫ぶトランプに、安倍首相は「日本の自動車メーカーはアメリカで雇用の創出に貢献しておりこれからそれをもっと増やす」「尖閣諸島を安全保障条約の範囲に含めないと日中間の危機が強まる」と主張し、トランプはこれまでのツイッターでの鋭い揶揄を引っ込め官僚が書いたペーパーを読み、尖閣は安保の枠内に含めることをあきらかにし、両国間の貿易自由化を基本として日米の信頼関係はいっそう強める必要があると安倍に応えた。

 その後ゴルフ場でどんな密約が交わされたのかは知るよしもなく、そのさなかに北朝鮮がミサイルを発射したなどという「おまけ」もついたが、マスコミはこの会談を「安倍外交のホームラン」と称えている。
 ここでマスコミでは決して取り上げられることのない視点で考えてみよう。
  「雇用の創出」を錦の御旗として掲げてきたトランプの考えのもとで起きる現実は、グローバル化した日本企業のもとで労働力を売って生活しなければならないアメリカの労働者を増やすということだ。つまりアメリカの労働者が日本を拠点とする資本にその労働を搾取されるということだ。
 もちろんアメリカ資本はとっくに諸外国でその国の労働者の労働を搾取してきているが、その場合、その搾取される労働者の住む国の賃金水準が低いということが前提にあった。しかし、今度はこれまで圧倒的に賃金水準の高い国であったアメリカの労働者を日本というそれまでは賃金水準がアメリカより低いと見なされてきた国の資本が搾取することになったのだ。
 これはあくまで「政治的配慮」であって、国際市場での不利を承知で実際にはもっと別の手段で利益を上げるという考えを日本企業と安倍首相は持っているのかもしれないが、まともに考えれば、アメリカの労働者階級は日本の労働者と同水準かそれ以下の賃金で我慢しなければならないほど苦しい立場に立たされているのか、あるいはそれによって高額になるであろうクルマを買わされても"made in USA"であれば文句が言えないと考えているのかである。
  かつてアメリカ資本が圧倒的に優位であった時代にそこに雇用されて高給を得てクルマの「消費者」(購買者)としても資本の成長に奉仕してきたアメリカの労働者達は、いまではその雇用者に見捨てられ、日々苦しい生活を営んでいる。もちろん日本企業の労働者達もいつ同じ目に遭うか分からない。
 どちらにせよ、労働者は資本による雇用の機会を奪われては生きて行けないのが資本主義社会の「原理」であって、その真実が「雇用創出」への渇望となって現れる。
  しかし、もう少し深く考えてみれば、なぜ自分たちの手で自分たちに必要な生活資料をつくり出すことができないのか?という率直な疑問が生じる。その事実こそが問題なのだ。
  なぜ資本家企業に自分の労働力を売り渡し(つまり雇用され)、資本家の目的意識を達成させるために働き、それによって生活費をもらって生活しなければ生きて行けないのか?なぜそこでの労働は自分たちの目的を達成させるために必要なモノを直接生みだすのではなく、雇用者である資本家達に利益を得させることを目的に彼や彼のブレーン達が考え出した商品を作らされるのか? なぜ高級そうなデザインやイメージを持つが実際にはたいして性能が良くないモノを毎日8時間以上も働いて生みださねばならないのか?
 そしてなぜ雇用者たちはこうして「消費拡大」のために必要もないモノを次々と生みだし、そのために貴重な地球資源を使い果たし、環境汚染をもたらしているのか?労働者達はなぜもらった賃金を、それを買うために使い果たし、しかもそこから「消費税」なども取られるのか? なぜ、政府はこんな馬鹿げた状態を尻押しし、「経済成長」のためなどとウソをつくのか?などなどである。
 資本家達が市場での競争に勝ち利益を獲得するためにモノをつくるのではなく、われわれが必要なモノはわれわれ自身の手でつくり、必要なモノを必要なだけ生みだせば良い社会を実現しなければ、いつかは人類は滅びてしまうだろう。そのためには資本家など必要であるはずもなく、そんな連中に雇用されねば生きていけない社会など求めてはいけないのではないか。

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