« 内閣府世論調査の結果をどう考えるか? | トップページ | 閑話休題 シリア毒ガス攻撃を巡る「想定問答」その1 »

2017年4月 3日 (月)

Nスペ「爆問VSトランプ異例の経済政策で何が?」での問題

 昨夜のNスペ「爆問VSトランプ異例の経済政策で何が?」ではトランプの経済政策で今後世界経済はどうなっていくのかについて世界の識者の見解紹介や日本の若手気鋭のエリートたちが爆問の問いに答える形で展開された。

 若手エリート学者の見解はトランプの政策はかつて1930年代後半に行われたアメリカのニューディール政策(理論的にはケインズが基盤となった)と1980年代後半に行われたレーガン大統領による「レーガノミックス」(理論的にはフリードマンが基盤となった) の「いいとこ取り」をしたものだと言っていた。この考えに同席していた他のエリートたちもほぼ同意していたようだったが、それを「資本主義の危機」ととらえるか「チャンス」ととらえるかの違いがあった。フランスの社会学者マイケル・トッドなどは前者の立場であり、アメリカの識者では後者の立場の意見が紹介された。
 しかし、問題はニューディルがその直前にあった世界的金融恐慌に対する克服策としての「国家主導型」資本主義への軌道修正であり、その後第2次大戦で勝利し、このアメリカ式の国家主導資本主義が本格的に軌道に乗りイギリスなどもこれに従った戦後資本主義の再興期があり、その中で日本やドイツも経済成長を遂げたのであるが、その後1970年代になって、日本やドイツに追い上げられたアメリカ、イギリスでこうした国家主導型資本主義の矛盾が顕著になってアメリカの製造業が衰退をはじめ、イギリスでは「イギリス病」と言われる慢性的な不況が続いたあとで、その克服策として社会保障や軍備費などでの国家の負担増を減らし「自助努力」を旨とする「新自由主義」を旗印としたレーガノミックスやサッチャーの経済政策が行われたのである。
 そしてその後、「社会主義圏」崩壊で一人勝ちしたかに見えたアメリカがそれにも拘わらず経済的も軍事的にも失敗することでこの両方の「修正資本主義」が破綻したのが今日のアメリカであるといえるだろう。
 そうなればトランプの政策は「いいとこ取り」などではなく、単なる「寄せ集め」あるいは「つぎ当て」策としか言えないだろう。
 自由貿易主義はもともと財の私有とその商品としての売買の自由を旨とする資本主義の基本思想の上に世界市場を前提とした表現であり、この資本主義的「自由」が実は矛盾の根源でもあるのだが、オバマまでのアメリカ経済の理想は完全な「自由貿易」が世界資本主義経済の普遍的姿であり、国家はそこで生じる問題を調整する立場であるということであった。これは基本的に「新自由主義的」ともいえるが、一方でこの「新自由主義」だけでは社会保障や労働者の失業問題などは根本的には解決できず、そこに必然的に国家が介入せざるを得なくなる。オバマケア問題はこの矛盾に直面した。しかしそれにも拘わらず社会的格差は増大の一途をたどったのである。
 資本主義的「自由主義」と「国家介入」の両極を振り子のように動くのがいまの資本主義の姿であるといえるだろう。
 トランプはふたたび「国家介入」に振れたが、今度は「世界資本主義の先導者」としてではなく、「自国第一主義」であり、他国との摩擦も辞さないという強行な政策である。これはある意味でアメリカ弱体化の表れと言えるが、一方では強硬手段で国内労働者の雇用を増やすという意味で国内の失業者には受けが良いであろうが、他方で関税障壁など他国との摩擦を辞さないという政策でアメリカの国際貿易収支は悪化するだろう。
 なぜならその政策は相手国からの経済的「報復」を受けるだろうし、それを圧力によって押し返すなら国家間の政治的亀裂が生じ、国内の労働賃金の水準が高いがゆえに世界市場での「メイドインアメリカ」は競争に勝てず、どちらにしても貿易収支は悪化し、国内の経済も悪化することになり、一時的に失業を免れた労働者は再び失業することになるだろう。
  しかも今度は大規模な不況に襲われ、これが引き金となって世界資本主義経済は大恐慌に陥り、いよいよ末期的症状を呈することになるかもしれない。最悪の場合、各国で経済のゴリ押し政策をバックアップする軍備増強の競争となり「第3次世界大戦」もありうると思う。
 そうなる前にこうした「出口のない状態」の出口を見いだせるかが問題だ。

|

« 内閣府世論調査の結果をどう考えるか? | トップページ | 閑話休題 シリア毒ガス攻撃を巡る「想定問答」その1 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/65102169

この記事へのトラックバック一覧です: Nスペ「爆問VSトランプ異例の経済政策で何が?」での問題:

« 内閣府世論調査の結果をどう考えるか? | トップページ | 閑話休題 シリア毒ガス攻撃を巡る「想定問答」その1 »