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2017年4月19日 (水)

トランプの「力による平和」の背景とその先に待っているもの

 (2017.04.20 一部修正)

トランプ大統領は、このところシリア内戦、対ISそして北朝鮮問題と続く緊張状態に「力による平和」をアピールしている。トランプは就任当初は「世界の警察官であることをやめる」と言ったオバマの戦略を引き継いだ様に見えたが、実はやはりアメリカの強大な軍事力で世界を支配しようという意思が強いことはこれであきらかになった。そしてその意向を汲んだペンス副大統領は日本を訪れ、安倍首相と「力による平和」で協調することを確認、同時に多国間貿易協定に代わる二国間貿易協定を推し進める意向を表明した。麻生財務相はこれに対して日本はアジアでの多国間貿易協定の主導的立場を採りたいと主張し、一定の抵抗を示したがおそらくそれに代わる何の展望もないのであろう。

 アメリカ国内ではアメリカ人の雇用を護るために外国人労働者の入国に厳しいフィルターをかけ、移民流入を抑え、アメリカ人にはアメリカ製の商品を買うようプッシュしている。その一方で日本や欧米の自動車メーカーなどにアメリカへの投資をプッシュし、それを行わなければ日本メーカーのクルマの輸入制限も辞さないとしている。さらに二国間貿易協定では日本からの自動車輸出などへの規制と同時にアメリカからの豚肉や穀物などの輸入についての規制を外せと迫っている。
 こうした一連のトランプによる政治的流れの中でいったい彼が何をしようとしているのかが見えてきた。
  「アメリカ・ファースト」はアメリカ第一主義と言われるが、要するに「アメリカは世界一強くて、世界の政治経済を牽引し、国内的には世界で一番裕福な国になる」ということであって、決してかつてのモンロー主義の様な「孤立主義」ではない。要するにアメリカ的世界を世界標準として認めさせ、そのリーダーとしての位置を力ずくで守りたいということであろう。
 これは20世紀には政治的にも経済的にも一大世界帝国であったアメリカが没落に向かうことへの恐怖と焦りの表れとも見える。かつて「パックス・アメリカーナ」時代の余裕の上に築かれていた「自由と民主主義のリーダー」としての顔の裏側にある国家エゴイズムが全面に出てきたようだ。
 しかしトランプの政策をこのまま推し進めればどうなるかを考えておくことが必要だろう。
かつて世界恐慌から抜け出し雇用を増やすために公共事業を拡大し、企業の投資を促し、過剰資本の処理形態である「無駄の量産(消費財の消費サイクルの無制限な拡大や軍需産業への莫大な支出、第3次産業など不生産的産業の拡大など)」によって産業を活性化させることで労働者の賃金が上がって行った結果、アメリカ的「豊かな国」が実現したが、いまこれが資本のグローバル化によって大きな壁にぶつかっているという事実をトランプは見ていない。それが崩れようといているときに、再びこの状態に戻ろうとするということは、まさに時代の逆行である。
 いまグローバル資本は世界レベルでの利潤追求のために資本の回転を加速させており、その中ではグローバル資本のもとで労働力を搾取される国の労働者が国境の内側にあってその国の生活水準ギリギリのレベルで働かされている必要があるのだ。
  そのことによってその国へのグローバル資本の投資が莫大な剰余価値を持った商品として国際市場に登場し、それによってグローバル資本家たちは莫大な利益をあげている。だからこうした国家間の「生活水準の差」がないとグローバル資本は利益をあげられなくなっている。だから本来インターナショナルに共通な立場に立つ労働者階級が連帯することはグローバル資本にとって最大の恐怖であって絶対にこれを防ごうとする。
 一方で生活水準の低い国々で働く労働者は、国境を越えて「豊かな国」に移住することでより良い生活を求めようとするのは当然のことである。しかし「豊かな国」の労働者はそれによって自分たちの職を奪われることを恐れ排外主義に傾く。それらの国の支配的階級はこの労働者たちの排外主義的流れを自分たちの利害を護るために巧みに利用しようしている。
 しかし他方でアメリカがトランプの「アメリカ・ファースト」をゴリ押しするならば、たとえ強大な軍事力をちらつかせながら貿易収支をむりやり改善させようとしても、アメリカ製品の国際市場での売れ行きは落ち、競争に負けるだろうし、競争に追いつくためには国内労働者の賃金を下げねばならなくなるだろう。その結果、製造業で利益を上げられないことを再認識したアメリカは、AIなどの知識産業、第3次産業やサービス産業など不生産的産業で儲ける資本家に依存せざるを得なくなるだろう。結果、一部の資本家や高給労働者以外のアメリカ国民は賃金が上がらないのに高いアメリカ製品を買わされることは嫌い、やはり安い外国製品に頼らざるを得なくなるだろう。 さらに生き残った稼ぎ手である知識産業やエンタテーメント産業にも外国から有能な労働者が簡単に入れなくなれば、次第にグローバル資本のアメリカ企業への投資は減っていくかもしれない。
 おそらく辣腕資本家でもあるトランプ大統領はそのあたりで自分の経済政策が間違っていたことに気づき、なし崩し的に軌道修正を行うことになるだろう。しかしその軌道修正は結局は一握りの大資本家が莫大な利益を上げ、アメリカの労働者階級はその「おこぼれ」で生活するというパターンに落ち着かざるを得ないと考えられる。
  その結果は、世界中にナショナリズムを流布させたことによる、「力による平和」をちらつかせる政治が横行し、世界からテロは減らず、格差はますます拡大し、国家エゴによる対立が激化する。
 そしてその先に待っているものは....... 戦争である。
 日本の安倍政権はこういうことに少しも危機感を持っておらず、オバマでもトランプでもアメリカ大統領のいうことには黙ってついて行くのである。世界市場でまだ強い自動車産業を助けるために農業を犠牲にし、小規模自営農業を大資本の元に集中させ、農民を農業労働者化させることになるだろう。そして憲法改定で国軍を保持し、「経済活性化」のためと称して軍需産業を拡大させながら、「自国のことは自国で護る」と見栄を張りつつ、在日駐留アメリカ軍の肩代わりを日本軍に行わせ、アメリカの軍事予算削減に貢献すること位しかできないだろう。
 

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