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2017年7月24日 (月)

人手不足なのになぜ労働賃金が上がらないのか?(その3)

 今朝(7月24日)の朝日新聞朝刊第1面に「移民頼みの現場」という見出しで、いまの日本で実質的に「移民」といってよい外国人労働者が108万人もいて「人手不足」を補っており、年々増え続けているという記事が出ていた。

 こうした現実に反対する動きを「排外主義」として対置し、分け隔てなく移民を受け入れるべきだと主張するのが朝日などに代表される「リベラル派」の見解であろう。
 それに対して、「排外主義」と呼ばれる人たちは、思想的に「国粋主義的右翼」であるひとももちろん含まれているが、実は、現場で働くフツーの日本人労働者も多いのである。彼らは、一方で過酷な労働から解放されるために外国人労働者の助っ人は必要だと思いつつ、他方では外国人が自分たちより安い労賃で雇用されている現実を知っており、それがやがて自分たちの労働賃金や労働条件を悪化させる引き金になることも知っている。
 こうした事情はいま中東からの大量の移民で混乱しているEUやメキシコからの不法移民の大量流入問題を抱えるアメリカでも同様だ。
 EUの中でも経済的に好調なドイツでは移民を受け入れて「人手不足」を補うことに積極的だが、それ以外の国々ではおおむね移民の受け入れには「待った」がかかっている。フランスで「排外主義者」ルペンに勝ったマクロンは、「リベラル」のカンバンを掲げる関係上、移民受け入れに動いているが、フランス国内では労働者達が反対している。そしてより状況のよくない東ヨーロッパ諸国では「移民受け入れ絶対ノー」が大半である。
 アメリカではトランプが大統領選以来掲げている「メキシコとの国境に巨大なカベ」をつくるという方針を変えていない。そしてそれを支持しているのは「ラストベルト」などで失業している白人労働者たちである。
 こうした状況が最近著しくなってきたのは背景に資本のグローバル化があるからだ。グローバル資本によるアフリカや中南米の資本主義化が遅れた国々での、それまで「先進資本主義諸国」に食料や森林資源、鉱物資源などを供給する国だった地域の人々を、安い労働力獲得のための製造工場の進出により「工場労働者化」していったという現実がある。
  こうした国々の労働者達はあまり遠くないところにある「先進資本主義国」では自分たちと同じような仕事をしながら、自分たちの何倍もの賃金を得て生活している労働者がいることを知っている。だから機会があればそうした国々に行って生活したいと思うのは当然である。
  また中東では石油などの地下資源を「先進資本主義諸国」に輸出することで莫大な蓄財をした国とそうでない国々との間の軋轢が高まり、金持ち国は最先端技術をカネで買って急速に先進資本主義の生活様式を取り込み西欧化していったが、そうでない国々はそうした国々との経済的格差が増大し、それに西欧型生活文化への反発から来る宗教的対立が絡んで複雑な対立構造が出来上がっていった。その中で西欧のリベラリズムに刺激を受けた「アラブの春」が起こり、その混乱に乗じて台頭したISや、アフリカ、イエメンなどでくすぶっていた紛争に火がついて、これまでなんとか普通の生活を送っていた人々が大量に自分の国を捨てて逃げ出さねばならい状況になっていった。
 こうした資本のグローバル化がそれまで各地域で独自の経済体制や生活文化を持っていた人々の間に、賃労働や商品経済とともにそれを媒介する「世界通貨」という共通の尺度でそれを測る手段を浸透させ、生活文化の違いを、資本主義的生活を「標準」とした「生活水準の差」として見せることになってしまったのである。
 このような問題を簡単に解決することなどできないが、究極的には世界中の国々の間で、労働賃金の差をなくしていくことが必要だ。もちろんそれは今のように「低賃金」に向かうのではなく、労働の生み出す価値とは何かを明確にし、社会的に必要な平均労働時間をもとにそれに相応しい対価を受け取るという至極当然のシステムが世界標準として確立されねばならないだろうし、それが原理的に不可能な資本主義経済体制を打倒するために世界中の労働者が国境を越えて手を結んで闘わねばならないのだと思う。
 そうでなく、もしこのまま行けば世界は再び戦争に突入することになるだろう。そうなれば世界中の労働者同士が意味もなく憎み合い殺し合いという悲劇がまた繰り返されることになる。
(おわり)

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