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2017年10月12日 (木)

西会津の「お天気お母さん」という生き方

 今日NHKアーカイブで放映していた「お天気お母さん」と呼ばれている西会津で農業を営む鈴木二三子さんという人物の一年間の記録が紹介されていた。この人は、子どもの時豪雨のために先祖代々引き継いできた田んぼをことごとく流されてしまった経験から、人間には制御不能のとてつもなく大きな自然界の法則性を察知して農業をまもるためにその変化に備えなければならないと実感した。そして高校を卒業した後も、クラスの仲間の多くが都会に就職していった後も農業を続ける決意をした。

 それからは、稲作方法に関する文献や肥料の科学的解説などの学術文献を親に購入してもらい、さらに自分自身も毎日の農作業での周囲の環境や天気についてつぶさな観察と記録をとり続け、膨大な資料をもとにその年の夏から秋にかけての天気を予想するようになった。その熱意は半端ではない。おどろくべき観察力と世界中から情報を集めるパワーは並ではない。学者顔負けである。
 ところが最近になって、気候の変動が激しくなり、その予想の振れ幅を超える変動が起きることが多くなった。しかし彼女はそれがなぜ起きるのか、あくまで資料を駆使してそのメカニズムを察知しようとし、またその激変への備えをどうすればよいかを冷静に考えた。
 鈴木さんはこうした農作業の中で化学肥料や殺虫剤は確かに有効だし、日本の農業はそれによって大きく進歩したと思うが、ただ収穫量を増やすことに終始していては結局長い目で見れば自然界のバランスを破壊し、農作物が取れなくなる可能性があることを悟った。そしてあくまで自然農法で稲作や野菜の栽培を行った。
  しかしそのため収穫量は半減し、苦労することが多かった。そしてそういう農業の実情を子供達にも理解してもらい、それなりに農業を続けていってもらうために子供達を農作業につれて出る。そしてある作業を子どもに任せたら、自分は余計な口出しはせず、たとえ失敗しても自分でその原因を知り、どうすれば良くなるかを考えられるようになってほしいと考えている。
 こうした実績をあげる彼女の評判は新潟や秋田など他県にも知れ渡ることになり、最近では各地に講演に出向いているそうだ。しかし彼女は少しも偉そうな態度をせず、あくまでもフツーの農家のお母さんなのである。
 この全くの「アマチュア科学者」であり、しかもそれが趣味などという半端なものではなく農業の実践に役立つ知識を自ら開拓していくという姿勢に、私は大きな感動を覚えた。
 こうしてごく普通の人々が自力で問題を解決し、それを他人とも共有していくという姿勢はこの社会の未来に一筋の光を感じさせる。
  誕生から教育、就労、結婚、子育て、老後の生活、そして死まで人生のすべてのシーンを「ビジネスチャンス」の対象として位置づけられ、一方で労働力を売り渡すことで資本の目的ために自分の能力を捧げ、他方で日々の生活ではそうした「疎外労働」から生み出され資本に利益をもたらすために作られた商品の「消費者」となり、労働賃金のほとんどすべてをその購入によって再び資本に環流し、そのようにして人生のすべてを資本に捧げ尽くすことが人間の幸せなのだろうか?
 はなやかに見える都会でサラリーマンとして暮らす労働者たちはこの過疎の農村で暮らす鈴木さんの生き方に学ぶことが多いのではないだろうか?

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