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2017年10月18日 (水)

「迷える子羊」さんからのコメントにお応えして

 「迷える子羊」さんからコメントを頂いた。私の前回の「すでに過剰生産恐慌状態のアベノミクス」というブログに対してですが、私の「一流大学コースに乗ることができない若者達はその段階で中間層や富裕層への道を閉ざされ、一人前の生活者としての生活もあきらめざるを得なくなる」という一文に違和感を感じられたようですね。

 まだ20代の「子羊」さんは、月収20万で「消費しない」独身生活を楽しまれ、月7万を投資に当てておられるというのだから決して「貧困層」ではなく、典型的「中間層」といえますね。そして少額投資を続けていけば将来は8000万もの財産が獲得できるということでそれを老後の資金に回そうと考えておられるようですね。実に堅実な人生計画を立てておられる様で、正直いって大変立派な若者だと感心しております。

 確かに「一流大学コース」に乗れなくても「子羊」さんのような堅実な人生計画を立てて生活することはできると思います。そういう意味では私の言い方が間違っていたかもしれません。おそらく今の安倍政権が「現在のアベノミクス体制のもとで安定した生活を送っている若者が多いのは事実だ」とおっしゃるケースの典型でもあると思われます。そこでご指摘頂いた野村総合研究所のサイトと金融庁のサイトからのデータを覗いてみました。その結果次の様なことが分かりました。

 野村総研では金融市場のマーケット対象を「超富裕層(5億円以上)」「富裕層(1億円以上)」「準富裕層(5千万〜1億)」「アッパーマス層(3千万〜5千万)」「マス層(3千万以下)」という5つの階層で分類していますね。そして2015年には「超富裕層」の世帯数が7.3万世帯、「富裕層」が114.4万世帯、「準富裕層」が314.9万世帯、「アッパーマス層」が680.8万世帯、「マス層」がなんと4173万世帯いることになっています。つまり「アッパーマス」以上の層の4倍近い世帯が「マス」層に含まれています。また図2ではこれらの階層の純金融資産保有額の規模と世帯数の2000年〜2015年の推移が表になっていますね。これを見ると、「準富裕層」から上の階層ではアベノミクス下の株価上昇の恩恵を受けて、金融資産が増大し、「準富裕層」から「富裕層」に移行した世帯も増えているようです。つまりお金持ちは投資に資金を回してよりリッチになり、中間層以下の世帯は株式投資で儲ける人は少なかったといえるでしょう。つまり金融資産蓄積上でも「格差増大」は実証されているということでしょう。

 そこで金融庁は我が国の「マス層」の金融資産が欧米に比べると預貯金優先度が多く、これをNISAなどの少額個人投資に回させようと考え、それが「マス層」の人たちにも株価上昇の恩恵をもたらすと同時に、金融資本が潤い、人々の購買力が高まり、デフレが解消されて経済の「好循環」がもたらされると考えているだろうと思います。

 しかし、実状は別のグラフによれば、 「高度成長期」の恩恵を受けて1972年〜1987年に5%辺りで最低水準だった金融資産ゼロ世帯数が、その後どんどん上昇し続け、2014年にはなんと30.9%まで行っています。金融庁では「マス層」の中の年収1千万以下の下層に属する層を4つに分けてその金融資産ゼロ世帯の年度別推移をグラフにしていますが、それによると年を追うごとにこの4つの階層での格差が大きくなり、2014年には年収300万未満の層では42.2%なのに対して年収1000万以上の層では12.7%に留まっています。つまり「貧困層」ほど金融資産ゼロ世帯の増加率が高まっているということです。

 こういう実状を見ると、どうも「子羊」さんのような中間層でも労働賃金を投資に回せるだけの余裕がある人もいますが、とてもそんな状況ではない「貧困層」の人たちがどんどん増えているということだと思います。たとえ月収20万であっても、家族を養うため少額個人投資なんかにオカネを回す余裕はなく、毎日の暮らしや子育てをまともにできるようにすることのほうが先だ、と考えている人がどんどん増えているのではないでしょうか?

 さらに言えば、この金融庁の方針では長期に渡る海外・国内企業への分散投資によってリスクを少なくして多くの「リターン」を期待でき、それが同時に開発途上国への投資を通じて経済発展や為替市場の安定に寄与することになる、としていますが、この主張自体がすでに危うい状況です。

  この主張はあくまでいまの世界経済が行っている金融市場や為替市場への各国政府のコントロールがうまく機能していることが前提ですが、すでに私の前回のブログでも書いたように、実質的に先進資本主義諸国(中国も含めて)は「過剰生産」状態であり、この過剰生産を過剰消費(不生産的消費)で 回して行かないと成り立たない経済体制になっています。そしてそのこと自体が資源枯渇や地球環境の破壊をもたらしているのですが、こうした状態も前述のように「貧困層」が日本やアメリカなどの先進資本主義国で増大して行くことにより「消費拡大」どころか「消費縮小」に向かわざるを得なくなっているのです。

  現実にこれらの国々で「消費拡大」に寄与しているのは主として「アッパーマス層」以上の人たちでしょう。トランプ大統領を支持しているの層が賃金を生活費に回すのが精一杯という現状に不満を持つ「マス層」以下の人たちであるのもそのことを示唆しています。この体制が続けば、いずれいつかはこの世界経済体制は崩壊するだろうと思われます。そのときになって、それまで蓄積してきた個人金融資産は貨幣価値の暴落とともに減ってしまうか消えてなくなる可能性もあるのです。

 また、子育てや家庭というものに興味がないあるいはそれが煩わしいと考える若者が多いのも知っています、しかし、そういう考え方の若者が増えていけばいずれは自分たちの老後の生活が孤独で経済的にも苦しい状態に追い込まれることになるのではないでしょうか?苦しくてもこどもを生み家庭を持ちたいと望んでいる人たちに次世代のことは任せておいて、自分は自分の楽しい生活が送れればいい、と考えるのは果たしてどうなのでしょうか?私が「一人前の生活者」と言ったのは、共に社会を支え合い生きて行くのが人間の本来の姿という意味で、次世代を育てることも含めて他者の生活とともに自分の生活に存在意義を見いだせる様な生き方を指しています。

 

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コメント

 野口さん、今晩は。
20万円の収入から7万円を投資し、
その収益で未来を買うと云う発想は一体どこから来たかと云えば、若者がリンクで説明しているように、
金融庁以下、金融商売の広告宣伝から生じているのは明らかです。
 金融庁が税金の節約に係わるのは、ブルジョワご商売の支援ですが、その弊害にも言及せざるを得ない場合かの二つでしょう。以下若者さんにも読んで貰いたいと思います。
 野村のデータで云えば、各層1世帯当たりの資産額を並べて見れば、否が応でもその差の歴然に驚くことになるでしょう。このような独占的状況については、資本論にも取り上げられており、マルクスもそのデータを解説しています。そしてその階層の固定化がより一層進むこと、格差の拡大こそ階級闘争と、社会改革の契機であることを繰り返し述べているではありませんか。
 また収益率のランダム図がありますが、これを同じ点の積み重ねがあると立体的に考えて見れば、その集約点、あるいは総合的平均値がどのようにあらわれるかは見物です。かなり低いものでしょう。 平面的に見れば、1点に多くの点が重なっているのは見えませんから、騙されます。
 問題は、金融商品の売り手の利益がどこにあるのかと云うことです。様々な手数料がまるで0で、しかも税金も0とうたっていますが、信託報酬の2%前後が分かっていれば、売り手の金融会社に奉仕するだけであることは云うまでもないでしょう。
 若者がこうした金融商品販売員として収入を得ていないことは記述から明らかですが、もしそうなれば、彼の収入そのものが、金融詐欺に近づき、合法詐欺そのものになるでしょう。安定するものではありません。積み立ての元利合計計算を様々な条件で行うことはできますが、積み立て額、期間、はともかく、利率の変動や、その条件に応じての信託報酬などの操作が絡めば、変化量が大きく変わり、所定の結果には近づかない方が普通であると分かることでしょう。
 世界の不況状況は、野口さんがご指摘されるように、潜在的恐慌状態にあると見るところですから、金利そのものの期待は崩壊していると云えます。逆に銀行が金利をどのように削り込んできたかを知れば、なりふり構わぬ金融商売の身勝手さはまさに極まるところです。決して近づかないことです。
 マルクスは労働新聞を発刊する側から問題をつかみ、
こうした資本主義的生産体制、金融体制の問題に肉薄したのです。8000万円の資産の夢もその反面ですが、まずは、その夢の正体とその矛盾に立ち向かうことを、マルクスは我々に教えてくれています。どっちを選ぶかは、経験がそれを決めることになるはずです。
 いろいろな経験から学んで貰いたいと思っています。我々の資本論を読む会には、銀行で働いている人もいますし、監査法人で働いている人もいます。こうした人々の話しを聞いて見るのもいい機会になるかと思います。
多少昔の本ですが、ウォールストリート投資銀行残酷日記 猿になれなかった僕たち、英文の題名は
Monkey Business Swinging through the Wall Street Jungle 三川基好訳 主婦の友社 2001 は、金融信託会社のサル共の話しが延々と続きます。おもしろさ抜群です。彼のコメントはそんな意味で、改めてこの世界の一端を知らしめてくれたと思います。あなたにもありがとうございました。

投稿: mizz | 2017年10月19日 (木) 16時26分

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