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2017年11月17日 (金)

「リベラル派」がはらむ根本的問題点(修正版)

 15日の朝日朝刊に、「米民主党苦悩の背景」と題してラストベルト地方の党委員長、デビッド・ベトラス氏へのインタビュー記事が載っていた。一地方委員として民主党の選挙運動を担ってきた現場の人間から見た民主党敗北の要因がリアルに語られていた。

 彼はいう、「(民主党は)配管工、美容師、大工、屋根葺き、タイル職人、工場労働者など、両手を汚してい働いている人に敬意を伝えるべきです。(中略)彼らは自らの仕事に誇りを持っている。しかし、民主党の姿勢には敬意が感じられない。”もう両手を使う仕事では食べていけない。教育プログラムを受け、学位を取りなさい。パソコンを使って仕事をしなければダメだ”そんな言葉にウンザリなんです。そして民主党が性的マイノリティー問題や人種差別反対の主張を「メインディッシュ」にしてきたが、それは必要なことではあるが本来は「サイドディッシュ」であって、人々の関心は、良い仕事があるか、キチンと家族が養えるか、子の誕生日にパイを用意できるか、教育を用意できるか、十分な休暇を取れるか、自分の仕事に誇りを持って引退できるかです。これらが本来「メインディッシュ」であって、「サイドディッシュ」より重点的に扱われなければならないのです。」
 ベトラス氏はこのような実態に対して党中央が無関心になっていることが敗北の原因だという。そして党中央はカリフォルニア州などのハイテク企業関連の超富裕層からの莫大な献金で潤っているのでこのような感覚になってしまったと批判している。
 ここで、もう一つ、昨夜のNHKTVの「クロ現プラス」でかつて民主党副大統領で「不都合な真実」という著作で有名になったアル・ゴア氏とのインタビューを放映していた。
  ゴア氏は二酸化炭素による気候温暖化のもたらす深刻な被害の事実を認め、これを防ぐためにパリ協定の合意に向けた精力的活動をしてきた。当然、トランプの政策には真っ向から反対している。また彼自身、再生可能エネルギー産業に莫大な投資をして化石燃料エネルギーに変わるクリーンエネルギー体制の強化に努めてきた。
  インタビューでは、その業績を称えると同時に最後に「あなたのことを再生可能エネルギーで莫大な利益を上げて超富裕層になった人と揶揄する人がいますが」という質問に対して、彼は、「最初からお金持ちになろうとしたわけではなく、結果としてそうなったのであって、再生可能エネルギーが主流となることによって経済成長ももたらされることを主張したい」と弁解していたのが印象的だった。
 確かにゴア氏の主張や考え方は一応正しいと思われる。しかし、ここで肝心なことが語られていない。それはここでも言及されている「経済成長」である。「経済成長」はいまの世に中では「消費拡大」とほぼイコールの意味で使われている。しかし最大の問題は地球上で限られた蓄積量のエネルギーの消費量をできうる限り減らす努力であって、ムダな生産とムダな消費によって成立する現在の資本主義経済体制の矛盾を根本的に克服し、ムダなエネルギ-を使わずに経済的に成り立つ社会を目指すことがいまの最重要課題だということではないか?つまり目指すべきは再生可能エネルギー化を巻き込んだ「消費拡大」ではなく、世界全体で「必要なものを必要なだけ生み出せば足りる社会」を実現させることであろう。
 そしてベトラス氏の指摘しているように産業技術のハイテク化が進んでも「両手を汚す」仕事はなくならず、そうした仕事に従事する労働者は社会にとって重要な存在であり続ける。技術の進歩に追いつけない労働者にパソコン教育を施してハイテク産業に再雇用させようというのは、いかにもハイテク産業経営者的発想ではないか。彼らは労働者を単なる「道具」としてしか考えていないくせに、「リベラル」をキャッチフレーズにしている。やがて世の中でAI化が進めば、ハイテク頭脳労働者も「合理化」の対象となるときがくるだろう。
  ゴア氏にあっても気候温暖化をもたらす化石燃料に代わる再生可能エネルギー産業を立ち上げようとする新興資本家の発想である。おそらく彼の頭の中にも「両手を汚す仕事」に従事している労働者のイメージはないし、彼の莫大な富が何によってもたらされているかも知りたくないのだろう。
 こうして米民主党の主張に代表される「リベラル派」が依って立つ政治経済的基盤はブルーカラーではないエリート頭脳労働者を主に雇用するハイテク企業の存在であって、そのイデオロギーは新興資本家の主張であるといえるだろう。そして彼らの闘う相手は化石燃料資本を主とした旧資本家階級を基板とした体制であろう。トランプはこうした状況にやり場のない不満を抱えた労働者を巧みに利用したのである。
 もう少し言えば、「リベラル派」の主張はいまや「手を汚さない」頭脳労働者たちと手足を使って労働する身体労働者たちに二分されてしまった労働者階級のうち前者を代表するものであるといえるだろう。実は彼らはこうした新興資本家の莫大な富の「おこぼれ」を頂戴して「既得権階級」として中間層上層部に乗っかっている人たちなのであって、新興資本家の思想を代表するイデオロギーに完全に支配されている人々といえるだろう。
 ちょうどフランス革命で新興階級として登場した資本家階級が「自由平等」を掲げて、労働者や農民たちを味方につけて王権・貴族階級と闘い、後の産業資本主義時代には彼らの上層部が資本家のイデオロギーに取り込まれて「市民意識」に染め上げられていったのとよく似た状況だ。
 「リベラル」は本当の意味で労働者階級を代表した思想とはいえない。しかしそれに対抗するためには、間違っても「反リベラル」を掲げるトランプなどに代表される既存資本家勢力の政党に与するべきではない。
  労働者階級が真にその主張を貫くことができるのは、頭脳労働者も肉体労働者も本質的に国境を越えて共通の立場にあることを自覚した彼ら自身が生み出す組織や政党においてであるといえるだろう。ちょうど産業革命時に「自由・平等」を掲げるブルジョアジーが経済的実権を握ると同時に被搾取階級としての本来の 労働者階級が明確に姿を現し、その矛盾を体現していく中で階級として結束していくことができたように。

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