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2017年11月10日 (金)

トランプのアメリカが目指す方向とその矛盾について(その3)

 さてここで、これまで見てきたトランプの動きとそのスローガンと実際の行動の間にある大きなギャップの原因について考えてみよう。

 トランプが大統領に選出された背景には、前任者オバマが掲げてきた理想主義的スローガン、つまり自由貿易の推進、核廃絶と世界平和、差別撤廃と平等な社会の実現、などは、実際の政策としても試みられ、TPP推進、パリ協定加盟、 イランとの核合意、北朝鮮への戦略的忍耐、アフガン・中東からの撤兵、キューバとの国交回復、オバマケアの実施などという形で現れた。しかしこうした「リベラル」政策の持つ、本質的な矛盾も噴出し、さまざまな形でアメリカ国内の内部に不満を生み出して行くと同時に、世界的にも中東での「アラブの春」に始まる内戦とISの登場による混乱とテロの拡大、貿易不均衡問題、北朝鮮の核開発進行など大きな問題が噴出した。
 トランプはそうした矛盾の噴出に乗っかって、オバマ・民主党への罵倒を浴びせながら「アメリカ・ファースト」「不公平貿易を廃してアメリカ人の雇用を護る」「不法移民阻止のため国境のカベをつくる」「税金のムダ使いであるオバマケアの廃止」などのスローガンで大統領に選ばれたのであった。
 オバマは、1930年代の世界恐慌と第2次大戦を挟んで新たに導入されたケインズ型資本主義(ケネディーなどの政策に見られるインフラなどへの公共投資を増大させ雇用を確保し、労働者の賃金を上げ生活消費財市場を活性化させ、通貨の価値を中央銀行のコントロールによって少しずつ下げながら、資本が回転することによって資本家が労働賃金上昇で失った利潤分を取り戻すことができるような仕組みの資本主義体制)によってもたらされたアメリカの繁栄とそれがもたらす矛盾(社会保障費など国家財政負担の増大、高額な税金、労働意欲の減退など)への批判としてその後登場した新自由主義的主張(レーガンやブッシュに見られるような自由市場と自助努力の強調 、「小さな政府」の主張など)とのバランスを取ろうとしたのであろうが実質的にそれに失敗したといえるだろう。
  オバマは資本主義経済が本質的にもつ矛盾(社会的に必要な富を生み出す労働者階級の労働が自らの主体的目的意識に基づいた労働ではなく資本家の目的のために富を生み出す労働となっていて、その労働の成果はすべて資本家の私的な富となり、その一部を労働賃金としてもらって生活せざるを得ない仕組み)を理解せず、ただ表面的な「リベラリズム」によってその矛盾の現象面での調整をしようとしたことが失敗の本当の原因だろう。
 その失敗を逆手にとって批判することによって大統領になったトランプは、しかし前述のように、その資本主義経済の矛盾をさらに上塗りするような政策を対置することしか出来なかった。
 一方、かつての「社会主義国」の生き残りであり、いまや完全に資本主義経済体制となった中国は、労働者の解放をめざすマルクスらの思想とはまったく相容れない一党独裁の政治体制のもとで資本主義経済を急速に推進させた。この国では相変わらず労働者階級は被搾取階級であり続け、農民達はさらに惨めな状態に置かれている。 経済的支配権は資本家(外国の資本家や投資家も含めて)が握っており、さらにその上に国家官僚や党官僚という最上層階級が政治的に強力な支配権を握っているという3階級支配構造の国である。
 皮肉なことに資本主義経済体制はもはや歴史的には「レッセフェール」で市場の「神の手」に任せていては大混乱になり崩壊してしまうので、国家が上から統制しないと生き残れないような形に変貌している。その意味で中国は西欧や日本に比べてはるかに効率よく、急速に資本主義経済を発展させ得たのである。
 いま世界中の労働者階級はこうした国際的な経済体制に乗っかった国家群の動向によって振り回され将来への不安を植え付けられながら日々ますますその主体性・社会的主導権を奪われつつある。そして自らの生み出す、ますます大きくなる富を一握りの支配階級の手に握られ、彼らの政治的意図をトップダウンに受け入れさせられているのである。
  そしてこうした状況に国境を越えて本質的には同じ立場として互いに手を携えて連帯できるはずの人々が、毎日のように繰り返される「国民としてのアイデンティティーを!」というキャンペーンのもとで分断されているのである。
 トランプの「アメリカ・ファースト!」などのスローガンはこの歴史の底流の真実とはかけ離れたアメリカ株式会社のワンマンCEOによる空しく的外れな「うわごと」にすぎないのだ。そして危ない橋を渡る経済体制の中で「思惑と操作」によって高騰する株価にご満悦の安倍首相はこのトランプの「うわごと」に「ホールインワン」で応えようとしている。何と馬鹿なことか!
(以上)
 

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