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2017年11月 7日 (火)

トランプのアメリカが目指す方向とその矛盾について(その1)

 トランプ大統領が安部首相との「蜜月」を世界にアピールし、その成果として北朝鮮の核脅威から日本を守ってやると同時にそれと引き替えにアメリカの軍需産業品を大量に日本に買わせる約束をさせたようだ。安倍首相は北の脅威を「国難」の一つとして掲げ、改憲に向けた総選挙で過半数をとった。だから「蜜月」なのだ。支配層の「蜜月」の陰で両国でともに置いてきぼりにされているのはその社会を下から支えるために働く人々だ。

 ここでトランプの目指すアメリカの今後を考えてみよう。トランプの「アメリカ第1主義」は、貿易の不均衡をなくし、国内雇用を増やし、アメリカを再び強くてリッチな国にしていこうというのであるが、例えば「貿易不均衡」は何故起きているのかを考えると、アメリカが戦後ずっと労働者の賃金を上げてその購買力をつけさせ、商品の販売力(消費)増大による資本の利益増大をバネしにして経済を活性化させるという方針(アベノミクスはこの焼き直し)を貫いてきたからだ。アメリカが誇る自動車などの工業製品は製造業の労働賃金が上昇し、国際市場では割高となって、敗戦で資本主義経済をリセットさせ比較的有利な条件で労働力をつぎ込めたドイツや日本の企業が作るクルマが世界市場を支配していくことになった。
  一方アメリカの労働者達は「消費拡大政策」で過剰なほど生活資料を購買する習慣が付いたが、その生活資料商品の一部であるクルマや家電製品を作る企業はもちろんのことそれ以外の食料品や家庭消費雑貨などを生産する労働者の賃金も上昇しこれらの商品も割高となっていく中で、賃金が上がっても生活消費財も値上がりして不満が増す中、貿易差益によって儲けようとする商業資本家達が安い労働力で作られた海外製品を大量に輸入し、「価格破壊」によってあっというまにアメリカ生活消費財市場は外国製品で埋め尽くされていき、製造業で失業した労働者達は比較的賃金の安い流通販売業界などに雇用されて行かざるを得なくなった。
  そして自動車などの製造業も低賃金労働者を大量に使用できるラテンアメリカやアジア諸国に生産拠点を移していった。メキシコで作られたアメ車は国際市場ではアメリカ企業のブランドで国際市場に見合った価格で売られる。メキシコの貧しい労働者は低賃金でアメリカ資本に雇用されるがアメリカの労働者は高賃金ゆえに職を失う。
 やがて「IT革命」の波がやってきてコンピュータ産業やインターネットを利用した産業が爆発的に増大し、マイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾンといったIT技術を駆使した新興資本家企業が急成長したが、ここではSEなどの頭脳労働者が「戦力」として比較的高賃金でどんどん採用され「中間層」の一部を形成していった。しかしその半分以上はアメリカ以外の国からの移民である。いわば人材の輸入である。
  その一方で従来の製造業は凋落の一途をたどり、投資家を含む金融業や不動産業、観光エンタメ業、などの不生産的資本家達がIT新興企業の資本家達とともに新富裕層として成長して行った。その中で技術ノウハウを軍事機密とすることで途方もない高額な価格で売れる軍需産業品は買い手さえつけばアメリカに残された最後の「儲かる製造業」であろう。
 そしてやがて中国という「強敵」が現れた。このアメリカの5倍以上の労働人口を擁する国は共産党独裁の資本主義国として20世紀末から鄧小平改革によって国際市場に参入し、農村からの出稼ぎなどの大量の低賃金労働と国家統制に近い強力なトップダウン経済システムによってあっというまに国際市場での強固な地位を確立した。いまやアメリカブランドのIT製品に留まらず、ヨーロッパや日本などの企業が販売する工業製品の多くが中国で生産されている。そればかりか中国は質の高い労働力を持っている。「中国製は粗悪品」というイメージはいずれ払拭され、「ものづくり大国」を自称する日本も太刀打ちできなくなるだろう。
  その反面で中国国内でも労働者の格差が急拡大しており、新興資本家として立ち上がった人々や「成功者」たち、そしてそれらの政治的利権を握った政治家や党幹部などは富裕層になり、海外に観光に出かけて「爆買い」などによりそれらの国々に「経済的貢献」をするようになった。その一方でいくら働いても生活が楽にならない労働者も増大しているようだ。
  また中国は工業製品輸出国であると同時に広大な国内での大量の生活消費財市場でもあり、ここに欧米や日本の資本家たちも巨大な「ビジネスチャンス」を見逃すはずはない。
 現状ではアメリカと中国は経済的には「持ちつ持たれつ」の関係だがトランプはこうした中国がやがて強大な軍事力を伴って世界経済を支配していくであろうことを予見し、日本を含めそれに対抗しうる軍事・経済ブロックを形成しようとしているかに見える。
 しかし、「アメリカ第1主義」は結局アメリカ衰退の原因をもたらしたこうした経済的仕組みの矛盾を見ようとせずにただ、不公平貿易の解消と移民流入と生産拠点流出によるアメリカ人の雇用喪失問題などを強調し、その防止の強硬手段を対置するだけなのである。それはいずれその失敗をドラスティックに表面化させることになるだろう。「蜜月」だった安倍政権はそのときその事態にどう対処するのか見物である(しかし他人事ではない)。
以下(その2)に続く。

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