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2017年2月5日 - 2017年2月11日

2017年2月10日 (金)

ブルガリアの縫製工場で作られるフランス・ブランド商品

 今朝のNHK-BS海外ニュースで「フランス・ドゥー」のニュースとしてブルガリア最大の縫製工場の実情が放映されていた。いまヨーロッパの縫製品の約9割はブルガリアで作られているという。この国はEU域内でもっとも労働賃金が安く、中国よりも安い。そして労働者の質は高いので、フランスの中・高級縫製品のほとんどがこの国で作られ、フランスで"made in europe"製品として売られている。中国や東南アジアなどで作られた製品よりイメージが良いのだそうだ。

 この工場で15EUROで作られたズボンはフランスで150EUROで売られている。10倍である。そしてこのEUで最低の賃金水準の工場で40年も働いてきたおばさんは「他の人たちから頼りにされていることを誇りに思っている」と述べ、毎日8時間以上の労働にも不満を漏らしていない。
そしてこの工場の下請け家内工業ではさらに安い賃金でこれらの縫製品のもっとも繊細で難しい部分を手作業で作っている女工さん達が多くいる。おそらくこの下請け工場では親会社からのノルマを達成するために大変な長時間労働を強いられているのであろう。
 おそらくこうした高級縫製品はフランスの「有名デザイナー」がデザインしているのだろう。だから法外な価格で売れるのである。
 さてこうした状況を見て思うことは、いわゆる「ブランド・デザイン商品」の意味である。それはこうした安い労働による製造工程で作られており、その割に法外な高価で売るために有名デザイナーのデザインという「付加価値」を付けて販売されているのである。
 実際にはデザインに要した時間はそれほど長くはなく、しかも一度のデザイン労働の成果は工場から生みだされる何千もの縫製品のデザインに用いられる。つまりその高級縫製品の実際の価値の大部分は縫製工場での長時間労働により生みだされた価値部分(すべての製品が製造のためには同じ労働時間を必要とする)であり、デザイナーの労働が生みだした価値部分はデザイン労働時間をその製品数で割った値の、ほんのわずかな価値部分に過ぎないのである。
 しかし実際に工場労働者がもらう賃金と有名デザイナーの報酬とは信じられないほど大きな逆の差なのである。
 縫製品会社の経営者とデザイナーは共にこうした低賃金労働と、デザイナーの「ブランド価値」(つまり虚偽の価値)の差を不当に利用して法外な利益を上げており、これが「需要と供給のバランスで価格が決まる」という「法則」に支配されている資本主義社会においては合法化されているのである。
 
  この放送でもうひとつ考えさせられたことは、EU域内での自由貿易を謳いながら、一方でこうした構成国による大きな賃金水準の差を黙認することで、実質的に「同一労働同一賃金」を放棄していることである。そのことが賃金水準の低い国々から高い国々への労働者の移住をもたらし、それらの国での賃金水準の高騰を抑制させる効果を持っている。そして賃金の高い国でのきつい労働や人の嫌う労働にはこうした国々からきた労働者が雇用され、労働の過酷な割に低い賃金でも我慢して働いている。これによって何とか社会運営がうまく行っている国では移民歓迎なのである。
 しかしまた一方で賃金の高い国でこれまで縫製工場に雇用されていた労働者は、賃金の安い国に工場が移転し、職を失う。そして別の不慣れな職場や賃金の低い職場へと移らざるを得なくなる。
 こうした状況に紛争地域などからさらに貧困な人々が押し寄せると、これらの国々の労働者達は自分の職を失うこととより安い賃金で働かねばならなくなることへの恐怖から移民排斥運動を起こすようになることはむしろ当然と言わざるを得ないだろう。
 おそらくアメリカにおいても似たような状況と考えられる。

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