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2018年1月15日 (月)

社会主義理論学会第76回研究会に参加して(その1)修正版

 昨日慶応大学で開催された表記学会をのぞきに行ってきた。内容は、紅林進氏の「民主制の下での社会主義的変革」と国分幸氏の「ポスト・スターリン主義の社会主義について」という二つの講演とそれをめぐる質疑であった。

 紅林氏の講演は同名の著書の発刊に合わせたものであったが、その内容の一部に関する以下の様なものであった。
  まず「社会主義的変革」の定義として、生産手段の私的所有を廃止し社会的所有とする。労働力商品化の廃絶。生産現場における労働者主権の確立。経済民主主義の徹底。経済を市場に任せるのではなく、意識的計画的なコントロール、とする。
 「民主制」については、人民主権の下、「人民の、人民による、人民のための政治」を行い、具体的には、自由・平等・公正な選挙と複数政党制に基づく議会制民主主義と、人民が直接参加する直接民主主義により行われる政治制度、とした上で次の様な論を展開する。
 民主制イコール民主的政治とは必ずしもいえないが、マルクスやロシア革命の時代と違って、今日では普通選挙の実現により、議会制民主主義に基づく政権交代や変革が可能である(暴力革命の否定)。しかし、資本主義下での民主主義の限界として、労働現場、生産現場における民主主義の欠如、資本の専制支配が問題となる。そこでは私的所有権、経済的自由、市場経済の絶対化が原則とされ資本による経済、政治支配が行われている。
 そこでこの<資本主義の限界を乗り越えるため>、労働現場、生産現場を含めた<経済民主主義>の徹底、私的所有権や経済的自由の絶対化を改め、社会権、平等性を重視するとともに、直接的民主主義を含めた<参加民主主義>の徹底と情報公開の徹底をさせ、中央集権的官僚機構の分権化、民主化、政治家や高級官僚へのリコール制の拡充、教育委員など一部の公務員への選挙制の導入、軍隊や警察機構の縮小や民主化(自衛隊や警察にも労働組合を)、治安立法の廃止、などを進める。
 ここでマルクスの経済理論や政治理論とどう向き合うかが問題であるが、経済理論は以下の問題については基本的に継承すべき(ただし科学的検証が必要)である。それは労働価値説、搾取の否定(剰余価値理論)、生産手段の私的所有を廃止し、社会的所有にする。労働力商品化の廃絶。市場に任せるのではなく意識的計画的な経済をめざす。労働者生産協同組合の連合体を形成し、<アソシエーション型の経済・社会>をめざす。これらにはソ連型社会主義経済の失敗も含めて再検討すべき課題もある。
 マルクスの政治理論には問題が多い。例えば<プロレタリア独裁の主張という誤り>。彼が「ゴータ綱領」の中でパリコンミューンについて評した中で資本主義から共産主義への過渡期の段階では政治的過渡形態としてプロレタリアート独裁を肯定し、レーニンもこれを「どんな法律によってもどんな規則にも束縛されない無制限の権力」として肯定したがこれは誤りであって、結局のちにスターリン独裁体制に繋がった。ロシア革命は良くも悪くもその後の資本主義社会や開発途上国の革命のありかたに多大な影響を与えたが、一方でプロ独や暴力革命を奉ずる左翼を生み出し、他方で議会制民主主義を通した変革を阻害した。
 しかし民主制の下での社会主義的変革はさまざまな困難性(形式的な自由・平等主義による階級の隠蔽、労働者の生活保守主義化、旧ソ連圏の崩壊によるオルタナティブの喪失など)を生む。そこで、それを克服して社会主義的変革を実現させるにはどうすればよいかを考える。そこで次の3つの提案をする。
 (1)資本主義の枠内での政権交代、政策、諸立法などによる大企業に対する規制や改革の推進。しかし政権を担うのは一党である必要はなく、連立政権や連合戦線的な政党でよい。
 (2)労働運動や社会運動の推進。資本の搾取や収奪、専横に対する対決や交渉を通じて、資本主義の矛盾を明らかにし、労働者の団結を促し、労働条件の改善を図ると共に生産の主人公が誰なのかを示して、社会主義に向けて労働者の意識を高める。
 (3)非営利的共同経済システム(労働者協同組合、社会的連帯経済、社会企業、NPO、NGOなど)を育成し、それによって営利中心の資本主義に代わるオルタナティブな非営利経済組織、経済運営が可能なのだということを示し、それによって社会主義に親和的な価値観や意識をつくりだす。
 最後に、社会主義政党の役割について。社会主義に向けた新しい社会のビジョンを打ち出し、具体的で実現可能な政策として提示し、その実現にむけて民衆に訴え、組織し、活動して行く役割としてきわめて重要である。<この政党は一枚岩である必要はなく、多元的な価値観や考えを尊重し、知的、道徳的ヘゲモニー(ただし前衛主義に陥らないように注意が必要)の党であるべきで、党内的にも民主主義を徹底すべきである>。
 以上が紅林氏の主張であるが、ここで<>で括った部分は私が注意すべき点としてマークした部分である。
 紅林氏の主張は最後の3つの提案に集約されていると考えられるが、私なりに整理すると、次の様になる。
  まず議会制民主主義の枠内での社会主義の実現を目指し、そのためには社会主義政党が労働組合や民衆への社会主義ビジョンを示しそれへの具体的実現に必要なプロセスを段階的に促し実践することによって労働組合や生産現場の人々の意識を社会主義容認へと導く必要がある。しかし社会主義政党は「前衛党」ではなく「プロ独」は否定されるべきであり、あくまで直接的民主主義に基づく政治を行う大衆政党であるべきだ。そして経済体制としては 資本主義経済体制にはオルタナティブとして対抗しうる具体的経済体制として非営利的協同経済システムを育成し、国際的には国連機関などへの働きかけを通じてグローバル化した資本への規制や労働者の権利を確立させていく運動を展開することで、国際的な連携による社会主義体制を生み出していく、という主張であると思われる。
  これについての私の詳しいコメントは紅林氏への参加者からの質疑を含めて次回で行うことにする。
 

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