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2018年1月18日 (木)

社会主義理論学会第76回研究会に参加して(付録)

 このブログへの「迷える羊」さんからのコメントもあり、またそれがいまの若い人たちの見解を代表したものの一部とも考えられますので、ここで若い世代の人たちに向けてちょっと一言付け加えておきます。

 人の人生はその人が生まれて死ぬまでに過ごした生活を現出させている歴史的背景、つまり時代背景があるといえます。私が若者だった時代は戦後の高度成長期で、戦争で壊滅的となった日本の産業が再び立ち上がろうと懸命の努力をしていた時代でした。当時は資本家達も会社を大きくしていくことで日本の経済事情を改善し労働者の生活も良くなるだろうという思いがあり、学生や労働者もその思いを一部共有し実質的にそれを支えていたと思います。
 しかしやがて企業間の競争が激化し、さらには輸出を拡大して国際市場から利益を得ようとする新興企業が次々と登場し、アメリカなどと貿易摩擦が生じたり、国内的には工場廃棄物やクルマの排気ガスなどによる公害問題が増大しました。資本主義経済の矛盾がさまざまな形で一挙に現れたのです。最大の貿易相手であったアメリカ(終戦後の一時期にはアメリカ的生活や文化が若者のあこがれの的でした)がソ連圏との対立で核戦争の危機をもたらし世界のあちこちで地域的代理戦争が起きました。そうした中で、日本の企業が莫大な利益をあげてわれわれの生活もそれによって向上してきたように思えるのも、実は一方でこうした矛盾を生み出すことなのだということに気づきました。
 戦後「社会主義圏」からの影響を大きくうけていた学生運動や労働運動は、その時期から反戦や反公害運動を基調としたものに変化して行き、私もその影響を大きく受け、資本主義社会とは何なのかを真剣に考えるようになりました。
 しかし未熟で小市民意識を克服し得なかった当時の学生運動が必然的に下火になり、学生達もいつのまにかどこかの企業や公共事業体に就職して行き、サラリーマンとなっていきました。やがて日本の資本家達や政治家達は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われて自信過剰になっていきました。そしてモノとカネがありまるバブルの時代になっていったのです。学生の就職率も高く、「消費」もどんどん増えましたが、今思えば何とも醜い時代でした。
 そしてその醜いバブルは当然のことながら崩壊し、20世紀末には戦後最大の経済危機がやってきたのです。そして若者達は「氷河期」と呼ばれるような就職難に落とされ、生活に苦しみ将来に希望を失っていきました。
 このような資本主義経済の激しい浮き沈みの中でも労働者達は営々と企業のために毎日働き、諸外国からは日本人は「働き中毒だ」と言われていました。つまり日本の労働者階級はずっと勤勉であり続けたのです。しかし彼らを雇用し働かすことで莫大な利益を獲得してきた資本家企業の経営者達は労働者達の労働の成果を社会に還元させることなくいたずらにあまったカネを右から左へ動かすことでバブルという幻の楼閣を生み出しそれによって稼ぎまくっていたのです。
 20世紀末から21世紀初頭の長引いた経済不況の間、若者達は全体に暗い時代のなかに置かれていました。だからその状況を少しでも忘れさせるために「前向きな気持ち」をことさら強調させられたり、おもしろおかしいエンタメに没入していった人も多かったように思います。
 その後アメリカ発のIT産業による「情報革命」や中国などの巨大な新興資本主義国や市場が登場し、事態は再び一変しました。そしていま世界(資本主義)経済は好調で就職率も過去最高だと言われています。しかしこれはおそらくたまたまそうなっているように見えるだけであり、その内実は実に危ない橋を渡っていると思います(その理由はこのブログのあちこちで書いています)。
 というわけで、つねに資本主義に振り回され続くけてきた労働者達の生活があり、その中でいかに自分なりの希望を持ち続け、何とか人生を全うしようと努力することは当然ですが、その振り回され続ける人生の背景、つまり何故いくら勤勉に働いてもそうなるのか?という問題に少しでも関心があるならば、その矛盾の謎を解き明かし克服しようとして人生のすべてを捧げ尽くしたマルクスやレーニンに興味を感じてもおかしくないでしょう。

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コメント

分かり易い説明と時代背景の解説をありがとうございます。

学会に若い人の人気がないのは、資本主義の矛盾を探すのは良いけれど、仮にそれを見つけても、自分たちの生活が具体的にかつ劇的に改善されるとの期待が薄いからだと思っています。

日本だけを見ても、環境汚染や外国人技能実習生問題、非正規の生活の大変さ、一人親の子育て、老後の生活、外交、防衛、財政など行き詰まりを感じます。

資本主義の背景や矛盾に目を向ける余裕、もしくは興味すら持たなくなっている可能性があります。

私自身は受験で必要だからマルクスやレーニンを暗記しましたが、そもそもテストで必要がなければ頭から消えていました。

企業で働いて稼いで生活をすることに、成人になるまで疑問を感じたことすらありませんでした。

私が今まで出会ってきた人のほぼ全ては、資本主義が当たり前と思っていました。

デフレで若者があらゆるものから離れ出していると言われてから、少しだけ何か変だよねと声は聞こえてはいます。http://dic.nicovideo.jp/a/%E8%8B%A5%E8%80%85%E3%81%AE%E2%97%8B%E2%97%8B%E9%9B%A2%E3%82%8C

頭の中のもやもやが少しすっきりとした気がします。

私自身は勤勉な労働者とは言えませんが、今の仕事はすごく楽しいので、真面目に働きながら資本主義を振り返ってみます。

不勉強な私に色々と教えてくださり、感謝しています。

投稿: 迷える子羊 | 2018年1月18日 (木) 16時06分

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