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2018年1月16日 (火)

社会主義理論学会第76回研究会に参加して(その3)

(前回から続く)

 2番目の講演者は、国分幸氏である。テーマは「ポスト・スターリン主義の社会に寄せて」であった。国分氏は、まず、「1:スターリン主義体制は「一国一工場」体制である。」という大項目から論を展開した。
  国分氏は、現存した社会主義国はユーゴを除いて、いずれもレーニンの4つのテーゼに集約される特徴を持っていると指摘する。
 それは、(1)共同所有=国有、(2)社会主義社会=国家独占的な「一国一工場」体制、(3)市場廃止の国営計画経済、(4)社会主義社会における「階級のない(非政治的)国家の存続」であるという。
  この4つの括り方については何故そう言えるのかが示されなかったし、実際にそのように括れるのかは私には甚だ疑問に思える。その上で、国分氏は上記の4つについて次の様に述べた。
 (1)についてはマルクス・エンゲルスによる直接的主張はないが、レーニンの「ロシア共産党綱領草案」に出てくるもので、非政治的国家による国有を共同所有(社会的所有)とするものである。だから(4)のテーゼと関係する。マルクス・エンゲルスの場合、共同所有(社会的所有)は、民法の「共有」とは異なり、共同体所有(総有)を意味する。さらに後期マルクスの「4つの大きな謎」として挙げられている「国有は共同体所有か?」「社会主義に国家は存続するか?」「再建される個人的所有とは何か?」「共同所有を共同占有と改定したしたのは何故か?」という諸問題とも関連する、と述べ、ここでも指摘されたこれらの諸問題間の連関や論理的な展開はされなかったが、単なる問題提起と考えるべきなのであろう。
 上記(2)のテーゼについては、マルクスは「社会的生産を自由な共同労働の一大調和的体系(one large and harmonious system)に転化する。」(暫定中央評議会派遣員への指示1868)、「共同の生産手段を用いて労働し、協議した計画に従って、多くの労働を一個同一(une seule et meme)の社会的労働として支出する自由な人々の一つの連合体(une reunion)を考えてみよう。」(フランス語版資本論)、「工場制度(le systeme)のこれら熱狂的弁護者たちは、「いったい諸君は社会を一つの工場(une fabrique)に変えたいのか?」と金切り声を発する。(同上)、「...すべての生産手段が全国民から成る巨大な連合体の手に集積されたならば、」(英語版 共産党宣言 エンゲルス)、さらにレーニンはこの体制を「一事務所一工場」(国家と革命) と明言している、と国分氏は問題提起する。
 さらに上記(3)については、市場廃止の計画経済として、「一国一工場」体制には全国規模での経営・管理の中央集権化とそのための諸機関が「不可欠であり、そうした計画経済を担いうるのは国家に類したものだけである、と述べる。これは問題提起ではなく国分氏の主張であろう。
 そして(4)については、マルクスが「人民全体が統治するようになる。そうすると統治される者がいなくなる。...そうなれば、政府はなくなり、国家はなくなるだろう」というバクーニンの主張を受けて「階級社会が消滅すれば、今日の政治的意味での国家は存在しなくなる」と述べているが、ゴータ綱領では「国家制度(Staatswesen)は共産主義社会においてどんな転化をこうむるか、換言すれば、そこでは今日の国家機構に似たどんな社会的機能が残るか?...共産主義社会の将来の国家制度 ...」と述べていると指摘し、これらのマルクスの言葉に置いて、彼が共産主義社会に非政治的国家が存在することを事実上認めたものと考えられる。そしてレーニンはこれをより明確に追認している、としている。
 したがって一国社会主義を主張するスターリン主義の歴史的な根は深いといえる、と国分氏は指摘する。
 国分氏は次に「2:国家死滅論の諸課題」という2番目の大項目に入る。ここでは、レーニンの2段階的国家死滅論(プロ独国家→ブルジョアなきブルジョア国家(階級のない非政治的国家)としての社会主義段階→非政治的国家も死滅した共産主義段階へ)を挙げ、このような従来の国家死滅論の前提として、社会の階級への分裂を伴う経済的発展がこの分裂によって国家を必然とした、というテーゼと、階級の死滅とともに国家も不可避的に死滅する、というとらえ方がされていると指摘する。
 ここで国分氏は、次の様に主張する。政治的国家には二つのタイプがあり、一つは、専制主義時代以前の古アジア的国家であり、共同体所有とそれを外敵から防御する機構の形成→その自立化とそれに専従する集団の支配階級化(分業に基づく階級)という形で国家が形成された。二つ目は古代ヨーロッパ的国家であり、そこでは奴隷制や商業の伸展に基づく私的所有の発展が階級対立として激化し、そこに国家が形成された。そして第二のタイプは国家死滅のテーゼも論理的帰結として理解できるが、第一のタイプでは共同所有に基づく階級社会と政治的国家が存在し、政治的国家の死滅というテーゼは当てはまらない、と主張する。
 その上で国分氏は、「一国一工場」構想は市場廃止の計画経済を目指すサンシモン派、フーリエ派、ブランキ、ブレイなどの流れから必然となったものであり、マルクスの構想にもそれが反映されていると指摘する。
 そして最後に「ポスト・スターリン主義の社会主義の基本的特徴として、次の様な項目を挙げる。(1)市場経済に基づく、(2)資本主義の株式会社を協同組合に転換する。(3)協同組合的所有(含有)を共同所有の形態とする(従業員持株制)。(4)生産手段の共同占有(Gemeinbesitz: 共同組合による自主的な経営・管理)、(5)利潤の共占有(Mitbesitz: 利潤分配制)。
  そしてこう結論する。この社会では、従来は資本家や地主などの特定の人々に限定されていた人格的独立性が、個々人の持ち分を伴う「含有」(個々人的共同所有)を物的基礎にして、万人の享受できる普遍的権利となる。ちなみに「この社会にも非政治的国家は存在する。
 以上が国分氏の主張であるが、これらの主張は古典的な文献からの引用にもとづくものであり、現在の資本主義社会の状況や、スターリン主義体制がなぜいかにして形成され崩壊したかなどの分析は一切行われていない。だから最後の結論もリアリティーがなく、資本主義体制内での「改良主義的提案」としかいいようがないものになっていると思う。 正直その観念論的恣意性とリアリティーのなさに失望した。
 これについて逐一検討する必要もないと思われるが、私のコメントを次回に記すことにしようと思う。

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