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2018年6月25日 (月)

「万引き家族」の是枝監督に拍手!

 カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」の監督、是枝裕和氏が、今日の朝日新聞朝刊「文化・文芸」欄で記者のインタービューに応じた記事が載っている。

 「万引き家族」が文化庁の補助金をもらって作られたにもかかわらず、日本の恥部を描いているとか、この受賞に対して文科省からの祝意を受けることを「公権力とは距離を保ちたい」という理由で断ったことに対して、SNSなどでバッシングを受けていることへの彼の回答である。
 是枝は「炎上商法じゃないよ」とことわった上で、「芸術への助成を国の施しと考える風潮は映画に限ったことじゃない。大学の科研費もそうだし、生活保護世帯への攻撃も同じです。本来、大衆、国民の権利のはずですよね。」と語っているのは、その通りだと思う。
  かつて大学教員として在職した独立法人化された大学で政府予算が削減され「競争的資金による研究補助」が推進されたため、研究者はこぞって科研費の獲得に走った。そこではできるだけ文科省の「受け」が良い内容の研究が目指され、同じような内容の研究テーマ間での資金獲得競争が起きた。結果的には、政府御用達の研究はリッチな資金を獲得し、そうでない研究は疲弊した。さらに最近では防衛省御用達の研究補助獲得競争が行われている。これは長い目で見て科学研究に良い結果をもたらすとは到底思えない。
 是枝は映画芸術の世界でこうした世の中の風潮に挑戦しているんだと思う。さらに「この映画が犯罪を擁護している」というバッシングがあるようだが、これに対して是枝は「「罪の意識が芽生えた男の子の哀しみをきちんと繊細に追っている。そこがこの映画の軸なんだけどね。これはよく観てもらえば分かる」と言っている。そして「補助金をもらって政府を批判するのはまっとうな態度なんだ、という欧州的な価値観を日本にも定着させたい。公金を入れると公権力に従わなければならない、ということになったら、文化は死にますよ。」と言う。まったくその通りだと思う。死ぬのは文化だけではなく科学もだ。
 いまの風潮は既得権をもった行政・官僚の「慇懃な上から目線」に対して民衆は従順に従うのが一番無難と言う風になっている。これは長い目で見るとこの国を滅ぼすことになるかもしれない。あれだけひどいインチキをしても支持率30%を割らない首相や世襲の大臣がまるで昔の摂関家のような世襲で支配権を持ついまの政治は末期的症状だ。いずれ「下からの革命」でも起きてこうした旧体制が打破されねば事態は根本的には解決できないだろう。
 朝日の記者は是枝に「反社会的映像はどこまで許容されるのか?」とただした。これに対して是枝は、目黒での幼い少女の虐待死事件などでも、あの両親は断罪されるが、たとえば独りで子育てをしている母親は一歩間違えたら自分も、と思うだろう。」と応えている。そして「人々を極限まで追い込まないためのセーフティネットを充実させることでしか、こうした犯罪は軽減できません。」と言う。これもまったくその通りだと思う。犯罪者を安手の正義感で断罪しバッシングしてみても何も生まれない。問題はなぜこうした犯罪や事件が起きるのか、その原因を深く究明することなのではないか?
 さらに朝日の記者は「SNSが浸透した社会で、意見を同じくする人たちにしか響かないコトバばかり飛び交っているが、意見を異にする人たちに伝えるにはどうすればいいか?」と問うた。是枝は「「意図的に長い文章を書いています。ツイッターを140字以内でなく、140字以上でないと送信できないようにすれば良いのでは?「クソ」と言ったって何もそこから生まれてこない」と言っている。
  これも私は大賛成。事実私はツイッターはやっておらずこのブログでいつも長々と文章を書き連ねている(実は私の作文力が乏しいのかもしれないが(笑))。そして現代のメディアが「分かりやすさ至上主義」に陥りがちなのに対して是枝は「世の中って分かりやすくないよね。分かりやすく語ることが重要なのではない。むしろ、一見分かりやすいことが実は分かりにくいんだ、ということを伝えて行かねばならないと思っている」と言った。
私は分かりやすく語ることは必要だと思うが、そのためには実は分かりにくい事実をどう理解すべきなのかという話者の知的能力が要求されるのだと思う。どっかの哲学者みたいに分かってもいないことを「分かりやすく語る」なんてのはウソを言ってることになるもんね。是枝さんそうでしょ?

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