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2018年7月 3日 (火)

7月3日の朝日朝刊に凝縮された現代資本主義社会の矛盾

 今日(7月3日)の朝日新聞朝刊のトップに「捨てられる新品の服、年10億点」という記事が載っていた。内容は記事を読めば分かるが、要するにアパレル業界市場での価格競争が激しくなり、販売店からの要求で製造元は製造コストを極限まで下げねばならず、生産拠点を低賃金労働者が使える国へ移し、そこでは技術がなくとも誰でも出来るように細分化され単純化された労働によって大量の労働者を雇用し、労働者は低賃金で過酷な長時間労働を強いられる。

 一方で大量につくられた衣服は市場で売れ残り、廃棄物処理業屋に処分が委託される。廃棄物処理業者の倉庫には売れ残った新品の服が山積みとなっている。そして国内でのアパレル業界では外国人実習生が事実上の低賃金労働者として雇用され過酷な労働に就いている。
 一方で過剰に作られ大量に廃棄される商品、他方でそれを過酷な長時間・低賃金労働で作らされる大量の労働者達。こうした矛盾に対して朝日の解説者は、業界の専門家の意見を引用しながら、消費者も、安さだけではなく、適正に作られているかにより関心を持つべきだと指摘している。
 しかし、ここでは「消費者」と「生産者」という今の社会の通念になっているカテゴリー分けでしか事態を見ようとしていない。実は、「消費者」も労働者であり、「生産者」とは労働者を雇用している企業主ではなく、本当はそこで働く生産労働者なのである。雇用された労働者は自分の意志で生産労働を行っているのではなく、賃金をもらって生活するために雇い主から言われた通りの労働を行っているのだが、その雇い主の意図はまさに資本の人格化としての資本の意志なのであって、資本の増殖のために買い入れた生産手段を使ってその資本の意志に従って労働者を働かせて生産しているのである。
 資本主義社会においては、こうして生産する人々とそれを消費する人々の間の有機的連携(どんなモノをどれだけ作るかの意志決定)が資本によって完全に分断支配されることで資本の意志として何をどれだけ作るかが決定されるようになってしまうのである。
 だからこのような馬鹿げた状況が当然の成り行きとして生じ、一方では過酷な労働が当たり前となり他方では過剰となった生産物が無駄に廃棄され、その処理のために膨大なエネルギーが使われ、そして地球環境をどんどん悪化させているのである。
 もう一つ目にとまった記事に「少子高齢化」に関するものがあった。それは最近日本ではついに、いわゆる「単身家庭」が両親と子どもなどの家族によって形成される家庭の数を上回ったということである。政府は「少子高齢化による経済成長の持続不可能性」を深刻な問題として取り上げ、若者達に子どもを産むことを奨励し、一部の政治家は子どもを産まない若者を社会的な罪悪であるかのように言っている。
 しかし、現実を見るとそれは決して「個人の人生観や好み」の問題ではなく、まさしくそのような状況を社会全体が生み出してきたのである。今朝の朝日朝刊「家族って」シリーズ単身社会編に、ある単身生活の男性の悩みが書かれている。アルバイトや契約社員を転々としながら親の年金からの仕送りでなんとか生活している様な自分の生活状態を顧みて女性に結婚を申し込むのも気後れがすると告白している。同じ朝刊の「声」欄への投書「少子化、国民に責任押しつけるな」(21歳の青年から)には政治家たちの若者の現状への無知を指摘しており、この投書に私も全面的に賛成だ。
 そしてもう一つ公開された国会議員の報酬と、上場企業で1億円以上の役員報酬を受け取った役員の数だ。前者は相変わらず最低限ごまかしができない額を届け出ているのだろうがそれでも一般労働者のそれと比べればはるかにリッチである。そして後者の1億円以上の大企業の役員報酬にいたっては、過去最多の500人を超えている。
  外人お雇い役員が日本人社長の3倍もの報酬を得ていたり、それも何十億という年俸である。社会的富はこうしてひとつかみの人たちの私有物として集中していく。しかもこの「役員報酬」は賃金水準の低い諸国で大量の労働者の労働を搾取し利潤を稼ぎまくったということへの「報酬」なのであって、労働者の様に自分の労働力を売って生活費を稼ぐために働き、その労働から生み出される剰余価値部分を無償で雇用主に取られた残りを賃金としてもらっているのとは本質的に異なる収入なのである。
  このような連中が世界中で「労働コスト削減」だの「生産の合理化」だのを繰り返し、いかに市場での価格競争に打ち勝つかを争っているために膨大な無駄の生産、過剰な生産を最初からそうなることを承知でやっているのである。
 曰わく「消費拡大による経済成長こそが暮らしを豊かにする」と。ウソつけ!!あんたたちは「自分は社会のためになる仕事を作り出し、従業員たちの生活費を稼ぎ出してやっているのだ」と主張しながらこのような巨額な報酬を正当化し、働く人々を、ただただ、モノを消費させ自分たちに利益をもたらす対象としてしか見ていないにも拘わらず「消費者」として持ち上げ、 無駄な消費を繰り返させ、そのために働く人たちの働く場や生活をメチャメチャにしてもそれを「個人のせい」にして、挙げ句の果てに地球をぶち壊しているではないか!!
 さあ、そろそろ真剣に資本主義社会のこうした矛盾がなぜ生じ、なぜいくら「持続可能な経済成長」(この内容自体が問題なのだが)などと叫んでみてもそれが実現できないどころかますます持続不可能の方向に向かうのか、なぜ若者達が将来の夢を持てないのかを理解しよう。
そのためにはまずマルクスの資本論を読むことから始めよう。この著作は古いイデオロギーの書などでは決してなく、現代の資本主義社会のメカニズムを理解するに必要な分析や理論がぎっしり詰まっている。かなり難解だが、未来の社会を働く人たちの手に取り戻すためになんとかその「カベ」を乗り越えよう!

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