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2018年7月 1日 (日)

アメリカ(株)CEOとしても失格のトランプ大統領

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」政策は、移民拒否とアメリカの貿易関税障壁高化という二つの制作によく現れている。彼の発想は単純で二つのカベを高くすることでアメリカ企業を活性化し、雇用を護ろうということだ。後者の具体例は鉄鋼、アルミなどの原材料品の関税引き上げ、知的財産の海外流出を防ぐためアメリカから流出したハイテク技術を応用した製品への関税引き上げなどである。それに加えて食料品の一部にも高い関税をかけようとしている。

 しかしアメリカ製の工業製品(特に自動車やオートバイなど)はその部品の多くを安い海外製品に頼っているという事実を無視したため、結果としてアメリカ製の自動車やオートバイは海外市場で割高となり、売れなくなる。またトランプの意を汲んでアメリカ国内に生産拠点を移したグローバル製造企業も結局自社製品が国際市場で割高となるため、アメリカから撤退を始めている。その上、安い輸入食品に頼る庶民は割高の生活費が必要となり、自動車産業なども労働者の賃金を上げなくてはならなくなる。これではかえってアメリカの企業は雇用を減らし、労働者は厳しい状態に置かれるようになるわけだ。
 実はそうなることは少し頭のいい資本家なら最初から分かっていたはずだ。だから「アメリカ株式会社のカリスマCEO」トランプはCEOとしても失格だ。
 資本主義経済の基本原則である「自由市場」はかのアダム・スミスによって「レッセ・フェール」による市場価格のバランス化という指摘にもあるように、もう200年も前から分かりきったことだった。
 実はこの「レッセ・フェール」ではやっていけなくなったのが20世紀からの資本主義経済体制なのである。それは結局資本主義生産様式によって急速に高まった生産力と、この自由市場による販売競争の間に生じる矛盾で常に過剰な生産を強いられ、それがついに1930年代に世界大恐慌という形でドラスティックに現れたのである。
 結局この状況下で第1次大戦の敗戦国ドイツやイタリアを中心として経済的不利を打破するためのトップダウン国家主導のナショナリズム的資本主義体制を生み出し、第2次大戦へと向かわせた。
 一方当時のアメリカでも大不況で失業者が街に溢れ当時のルーズベルト大統領が打ち出した国家的経済政策 (ニューディール政策)によって道路網電力網整備などの公共事業によってある程度の失業者は吸収されていたが、皮肉にもこの第2次大戦の勃発によって英仏への武器輸出が求められ、その後日本の参戦によってこの戦争に参戦することになったアメリカでは急速に拡大された軍需産業に多くの失業者が吸収されていったのである。
 そして戦後アメリカでは軍需産業が縮小されて一時再び不況が訪れるが、その後、軍需産業で開発された技術が民生品に応用され、巨大化した生産企業で乗用車や家電製品が大量に生産されるとともに、国際的中軸通過となったドルの強みを利用した管理通貨制度による経済政策で労働者の賃金を上げて消費市場を活性化させることで過剰資本を不生産的に消費させるサイクルを確立させることが出来たのである。
  敗戦国であるドイツやイタリアおよび日本は戦争でいわば「ゼロ・リセット」を掛けられた製造業はまったく新たな生産設備を投入し、そこに復員兵士たちによる大量の安い労働力が投入されたことによって急速に戦後型の産業資本主義が成長したためこうしたアメリカ型消費経済体制を確立させることができたのである。
 つまりアメリカもヨーロッパや日本の資本主義も純粋の「レッセ・フェール」型市場経済ではやっていけなくなったのであり、経済システムのどこかに国家が「経済政策」として間接的に介入しなければ常態化する過剰資本の処理を維持できなくなっていたのである。
 そしてその後20世紀末から現れた様々な国際的状況の変化の中で、この間接的国家主導型消費経済体制はさまざまなバリエーションを生み出していったが、あちこちで致命的な破綻(大量移民問題などに象徴される)を来たしうまく行かなくなり、いま再び世界はナショナリズムの嵐に見舞われている。
 そこにトランプはグローバル資本経済の基盤でもある20世紀型自由貿易体制を否定することで「アメリカ・ファースト」を貫こうとしているのだ。トランプのアメリカ的ナショナリズムと対立するEUや日本、中国などの「自由貿易派」はこのグローバル資本のもたらした矛盾に見向きもせずそれを維持し続けようともがいている。
 問題は「ナショナリズムへの道」では解決不可能であり、流通が国際化した市場でしか成り立たなくなった世界経済において国家間での労働者の賃金格差、生活水準の格差をつねに必要としているいまのグローバル資本の矛盾を、世界中の労働者階級がともに連帯して打破して行かねば解決はできないのではないか?
  「アメリカ・ファースト」ではなく「インターナショナル・ワーキングクラス・ファースト」なのではないか?

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