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2018年8月 4日 (土)

既得権階級の専横が支配する社会 その2 世界

 既得権階級が専横を欲しいままにしているのは日本だけではない。中国(共産党習近平政権の独裁)、ロシア(プーチン一派の独裁)、そしてやや違った形でEU(上流リベラル派エリート階級の支配)、さらにそれがもっとも特異的に現れたアメリカ(ヨーロッパからの移民国家でありながらもはや白人達が過半数に充たなくなりつつある社会での資本家的エリートの支配)などである。

 あからさまな言論弾圧を強める中国や、KGB的手法と水面下での世論操作を行い言論を封殺するロシアなどは言うまでもないことであるが、「自由と民主主義」を謳っているヨーロッパやアメリカでも「既得権階級」の支配に抵抗している人たちが増大している。なぜか?
 EUやの場合、これまでのリベラルな政策(2度の大戦への反省としてヨーロッパ諸国の統合、国境のカベを低くした移民への寛容、そして経済や通貨の統合など)は比較的順調に行われてきたように見えるが、それはEU内でも特に西側先進諸国での労働力不足を補う必要があったからだ。東側からの安い労働力が西側に流入することで、国際市場でも「ブランド力」を盾にすれば太刀打ちできる商品が生み出され、社会的には不可欠だが、先進諸国の若者達が嫌う「きつい、汚い、危険」な仕事に移民労働者達が従事してくれたからだろう。
  つまり西側の経済が成長すれば東側がそのおこぼれを頂戴できるというわけだ。この状態の中で、西側を中心として高等教育を受けることのできた人々はエリートの地位に就き、それができない人々はずっと下層労働者の地位に甘んじるという構図がすこしづつ出来上がっていった。多民族化するヨーロッパ社会での階級的矛盾の増大といえるだろう。
 この構図の矛盾が、シリアなど中東やアフリカの戦乱が始まって一気に爆発した。戦乱と飢饉で自分たちの国を逃れ出た大量の移民が安定した生活を求めてヨーロッパに流れ込んだ。そしてただでさえ下層労働者の地位に甘んじていたEU内労働者たちの仕事を奪うことになったのである。それは民族的・宗教的な差別意識を助長し、それに耐えきれなくなった人々の間からはテロリストも生まれた。
 それに対して社会のエリート層は相変わらずリベラルを看板にしながらも打つ手なく行き詰まっていった。その中でかねてより自分たちはヨーロッパの一員ではないと自任するイギリスの人々がEUからの離脱を主張し国民投票で勝ってしまった。そこでフランスのマクロンが我こそは「リベラル正義派の騎手である」と言わんばかりに躍り出て大統領選には勝った。ドイツではこれまでの実績で何とか持ちこたえているメルケルがフランスと手を組んでEUリベラルを何とか維持している。しかしヨーロッパ諸国では「打倒リベラルエリート」に燃えるポピュリズムが膨張し、EUリベラル派は危機に立たされている。
 一方アメリカでは、20世紀までは軍事的にはもっとも強敵だったソ連圏が崩壊し、あたかも一人勝ち状態となり 「パックス・アメリカーナ」よろしく自国の政治や経済が世界の国々の標準的目標となることを目指していたが、 21世紀になって急速に台頭してきた中国に生活消費財市場で押しまくられ、アメリカからはコンピュータやスマホなどのハイテク製品の生産拠点を中国に置き、中国の安くて優秀な労働力を使ってコストダウンすることで「ブランド力」を駆使して世界市場に売り込み、中国からは安い生活消費財を大量に輸入することで労働者階級の賃金水準を上げずに済ませるという形のバーターを成り立たせようとし互いに経済的には依存関係が成り立っていった。 こうしてアメリカがますます「消費大国」化する中で製造業で頑張っていたかつての労働貴族と言われたアメリカの労働者達は徐々にその地位を奪われ追い詰められた行ったのである。
 やがて中国の経済力や軍事力は急成長し、アメリカを圧迫するようになってきたため、アメリカはもはや自国の政治経済体制を世界標準として国連などで多少の犠牲を払ってもそれを世界中に広めようとするそれまでの方針を転換せざるを得なくなっていった。
こうした中でトランプが「アメリカ・ファースト」を叫びながら大統領に当選したのである。このトランプも「自助努力」を自任する資本家的エリートである。だから労働者のためを思ってやっている様なことを言うが、それはつねに資本家的視点によるものであることを忘れてはならない。そしてそれは政治的支持基盤からもオバマに代表される多民族的リベラル派と真っ向から対立する形となっている。
 このようないまの世界での状況で、単純に「リベラルかポピュリズムか」という二者択一図式で問題を建てては危険である。
  もっとも重要なことは、こうした対立項の背景に世界中の労働者階級が本質的に同じ立場にあるにも拘わらず、国境という枠内に閉じ込められているという事実。そしていまやエリート支配層の空虚で抽象的な主張でしかなくなった「自由・民主主義・リベラル」を看板にすることで、他方の「国益」を護るため国境の強化を叫ぶ人々と対抗しても何も生まれないだろうということだ。
  この世界を支えているのは決して「自由・民主主義・リベラル」を口先だけで唱えているエリート支配層ではなく、 世界中で自分たちの社会のために毎日汗水流して働き、時には「ポピュリズム」という馬鹿げた思想にも惑わされるが、実は互いに見えない絆で結ばれている世界中の働く人々であることを忘れてはならない。その絆が見えてくれば、決してまた「ポピュリズム」に惑わされた悲惨な戦争に走ることもなくなるだろう。

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