« 「クルマ革命」の動向とそれが意味するもの | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その2) »

2018年10月 8日 (月)

朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その1)

 10月7日の朝日新聞朝刊に入っている「GLOBE」の特集記事を読んだので、その感想を書いておこうと思う。

 この特集記事は7編の記事からなっており、朝日新聞のGLOBE担当記者と朝日新聞編集委員、海外総局員などがインタビューなどを交えてそれぞれのテーマで記事を担当している。各記事について概要をとらえ、最後にまとめて私の意見を書こうと思う。
-----(この3回シリーズの記事を読む時間がない人は(その3 結論)だけ読んで頂いても要点は理解できると思います。
-----------------------------------
 まず「フェイスブックは民主主義を壊すのか」というテーマの記事。2011年の「アラブの春」で若者たちを結びつけ、民主主義を世界に広めた「希望のツール」が、いまや各国政府の世論操作の武器として用いられているという事実、例えば独裁者が大量の「いいね」をカネで買ったり、政治家が人気を粉飾したり、極論を多数派の意見と誤解させたり、フェイクニュースをばらまくなどの行為が増加し、さらにそれがビジネスになっているという事実を取り上げている。
 この記事は最後に「投稿内容ではなく、「いいね!」の数に影響される人が多く、政治家が「いいね!」を欲しがるのは、好かれている人間と見せかけるためである、と結んでいる。
 ここではSNSというツールがもっている、瞬時に単純な判断結果を拡散させることで、それに従う人々を増やすという機能が政治的支配のために悪用されている。これはSNSがもともと目的としていたものではないかもしれないが、その「便利さ」の持つ裏の面だといえる。
-----------------------------------
 次に「新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か」というテーマの記事。AIの発達で、さまざまな仕事が消えていく中、企業に雇用されるのではなく個人で国境を越えた仕事を請け負い、稼いで生活するという「ギグ・ワーカー」という労働形態が登場し拡がりつつある。
 最近ではこうした「ギグ・ワーカー」に仕事を斡旋する仲介会社も登場した。こうした労働形態ではIT関係の仕事などは労働賃金の高い国から低い国へと簡単に仕事が流れていく。つまり国際的な労働力の流動化である。貧困国の労働者は簡単に仕事を得ることができるが、富裕国の労働者は仕事を失うことが多くなる。
 しかしこうした「ギグ・ワーカー」は社会保障も受けられず、つねに最低賃金で不安定な労働現場で仕事をしなければならない。実際に英国では「ギグ・ワーカー」280万人のうち25%が最低賃金以下で仕事をしている。
----------------------------------
 次の「人はロボットを愛せるか」というテーマは「なぜ人ではなくモノにすぎないロボットを愛さねばならないようなことになるのか」という問題でもあるが、いまの私にはさしあたり重要な問題には思えないので飛ばすことにしよう。
----------------------------------
 その次は「中国はデータを征するのか」というテーマの記事。ここでは中国のネット通販大手企業が開発したAIによる画像認識システムを応用した「欲望掘り起こしシステム」つまり顧客の行動や表情からの何を欲しがっているのかを自動的に推測させるシステムの話、さらにこのシステムを応用した監視システムの開発など、中国でのAI技術は世界でトップクラスの水準にあり、中国政府の莫大な資金が注がれているという現実。そこでは西欧諸国に比べると個人情報が集めやすく、ビッグデータを政府が把握しやすい。
 いまやビッグデータは、「情報のオイル(石油)」と言われており、さらに中国ではこうしたビッグデータの国外流出を厳しく取り締まっていて、データを独り占めしつつある、という危機感についてが書かれている。
----------------------------------
 その次は「「GAFA」の支配は続くのか」というテーマの記事。Google、Apple、FaceBook、Amazon の4社を「GAFA」というが、アマゾンの開発する音声によって電子レンジを操作したり、クルマの道案内や音楽再生などを行わせる機器、顧客が購買ボタンを押す前に商品を発送するシステムなどの開発と、それを通じて顧客の私生活まで深く入り込んだデータの取得を可能にする手法がこうしたIT企業へのデータの集中化を促しているという実状。そして当初は情報の民主化を進めると言われたインターネットがいまでは国家や大企業に集中し、むしろ中央集権化されつつあるという危機感がある。それに対してEUでは企業や団体に個人情報を域外への持ち出しが禁止され、利用者自身が自分のデータをコントロールする権利を保障している。しかしこれは大手IT企業がまだ育っていないEUでの産業保護の意味もある。
 こうした対立的関係に対して「大企業によるデータ独占は危険である。企業からサービスを受ける代わりに、利用者がどこまで個人データを企業に提供できるかを同意することができればウイン・ウインの関係になる」と指摘するIT企業経営者もいる。
 これに続いてアルゴリズムを監査する会社を作った人物のインタビューがある。
(続く)

|

« 「クルマ革命」の動向とそれが意味するもの | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その2) »

哲学・思想および経済・社会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/67249775

この記事へのトラックバック一覧です: 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その1):

« 「クルマ革命」の動向とそれが意味するもの | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その2) »