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2018年10月19日 (金)

人類にとってAIとは何かを考える(その3 AIの未来)

 このような事実に踏まえると、「ポスト資本主義」の社会ではAIはどのような形になっていくのだろうか?

 「ポスト資本主義」が本当に資本主義の矛盾を克服し得るための大前提は、「賃労働と資本」(つまり社会的富を資本として私有化する個人が、その増殖を目的として、社会的に必要な労働をそのための手段として「労働力商品」の形で買い取ることで経済が成り立つ)という関係から労働を解放することである。
  社会的に必要な労働を分担して行う人々が「資本の増殖」のためではなく、直接その社会のあり方をコントロールできる社会の実現こそ必要である。それがどのような形、どのような過程で実現されるのかは今のところは分からない。しかし、少なくともバルトリー二が言うような「資本主義の良い面を残して悪い面をなくして行けば良い」という様なものではないだろう。あるいは「拝金主義の悪徳資本家」がいけないのであって、まっとうな資本主義になればよい、というものでも決してないだろう。いかに「良い資本家」であっても彼は自分の所有する企業の維持と利益を挙げるために激しい競争の中で必死に「死んだ物化した労働」を用いて「生きた労働」から剰余価値を引き出さねばならないのであって、それが資本の法則だからである。
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 資本主義経済の末期的形態である「消費駆動型資本主義経済」での様に、過剰資本の圧迫から逃れるために、必要もない「ニーズ」を掘り起こし、資本の生産物である商品を購買させるために大規模な広告キャンペーンが繰り広げられ、そこにありもしない「AIによる未来社会の夢」が描き出されて、IoTとか音声認識自動車とかが「ハイテク新商品」として売りまくらねば経済が成り立たなくなるのは、本末転倒の極みである。
 なぜなら、いま「消費駆動型資本主義経済」によって、必要もない商品がどんどん売りまくられることで廃棄物や排ガスの増大で自然環境は破壊され限りある地球資源の消費が加速されている。そのため一方で「消費拡大が経済を成長させる」と声高に叫ばれながら、同時に他方で「持続可能な経済成長目標(SDGs)とかCSVなどが叫ばれている。過剰消費によってしか経済が維持できない今の資本主義はまさに「矛盾的自己同一」の世界である。
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 資本主義社会は本質的に「持続不可能」な経済体制である。それは私的所有が社会を支配し、本来社会全体にとって必要な目標が、資本の維持増殖という私的目標を前提としなければ成り立たない経済体制だからだ。多くの「生きた労働」を道具として支配する少数の「死んだ労働」の保持者が市場の自由競争というアンコントローラブルな世界の法則によって支配された状態で健全な社会的共通目標など築いていけるはずはない。だからSDGsやCSVも単に絵に描いたモチでしかなく、企業のイメージアップ広告の手段にすぎないものだろう。タテマエとホンネの齟齬やマスコミや広告による「洗脳」(いまではインターネットやスマホという手段による)は矛盾した社会の支配者が真実を覆い隠すために用いる常套手段である。
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 労働者が主体の社会では、社会的必要労働を分担する形態、つまり分業の形それ自体もこうした社会の実現に従って大きく変わっていくはずだ。その社会は資本主義社会が残した遺産として高度な科学技術や医療、教育などをこの労働者主体の社会に相応しい形に再構成し直し、高度な生産力は資本の生産力としてではなく社会的な共通目的のための生産力として再編成され、まず労働者の個人生活に必要な生活資料の充実に向けられ、剰余価値部分は社会的共有財や共同のシステムのために用いられ蓄積されるようになる。そうなって初めて「経済の成長=社会の成長」が実現されるだろう。そこではもう「過剰資本」に悩まされることはない。
 そこでは、資本の道具としての頭脳労働の「代替」としてのAIではなく、本来の人間労働の「延長」としてのAIが用いられるようになり、人間の頭脳の苦手な部分を補助する手段として活躍するだろう。それによって労働する人々は、必要に応じてAIを用い、人間の尊厳が破壊されるような方向でAIを用いる必要はまったくなく、そう考える者もいなくなるだろう。またそうなっても人間は労働をせずに「仮想現実」の世界で遊んで暮らすことで生物体としての人類の絶滅を待つのではなく、相変わらず自分の筋骨系・脈管系・脳神経系の労働能力をフルに生かしつつ、生物学的な進化をも可能にしていくだろう。
(以上)
 

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