« バルトリーニ氏のトークセッションへの感想に対するコメントにお応えして | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その1) »

2018年10月 6日 (土)

「クルマ革命」の動向とそれが意味するもの

 最近のニュースによるとトヨタとソフトバンクが手を結んだそうである。自動車業界の急激な戦略変化に対応して世界市場での優位性を維持することが目的のようだ。

 数年前のヨーロッパ自動車業界のEV化宣言以来、それまでクリーンディーゼル化に向かっていたドイツ自動車業界などでトヨタのハイブリッド技術に太刀打ちできないことが分かってきて、ハイブリッド技術トップの座にあったトヨタを世界市場から追い落とす目的もあってか、世界は急速にEV化に向かうようになった。それはもちろん同時にIT技術との統合で、高齢化社会で高まる運転自動化と安全対策化へのニーズをとらえ、市場での競争に先んじようという狙いもあっただろう。
 こうした背景から世界中の主要なカーメーカーは競ってグーグル、アップル、アマゾンなどのIT大企業と提携を始めた。今回のトヨタとソフトバンクの提携もその流れの一環だろう。
 しかしよく考えてみれば、こうしたクルマのEV+IT化の流れは、生活必需品化されたクルマを使う個人、特に身体機能や判断力が鈍った高齢者にとって安全なクルマは必要であるが、年金で生活する多くの 「フツーの高齢者」にはおそらく高価で手が出ないだろう。この恩恵に与れるのはほんの一握りの富裕な高齢者だけであろう。
 もっとも大きな恩恵に与れるのは物流会社やタクシー会社といった労働力不足に悩む企業だろう。こうした企業では、世の中一方でIT化が進行し、情報の世界では著しく「合理化」が進んでいるのに反して、相手が情報ではなくモノやヒトといった「実体」であるためそう簡単に「合理化」することはできないからだ。モノやヒトはインターネットでは運べない。
  したがってインターネットによる通販システム合理化が進んで顧客との情報のやりとりがおそろしく早くなったにも拘わらずそれによる商品の流通や配送の増大は人手の増加で対応しなければならない。そのため物流会社のドライバーや配送センターの労働者不足は深刻である。しかし賃金を上げてドライバーの雇用を増やしたとしてもコスト高となって激しい市場競争では勝てない。
  またヒトの動きも活発になるが公共交通機関やタクシーも人手に頼っているので運転手の不足は人手不足で長時間労働化が進む。この資本家的ジレンマを解決してくれるのがEV+IT化なのである。この需要は非常に大きいはずだ。
 ここで、このEV+IT化が急速に進展したならば何が起きるかを考えてみよう。
 まずこれまで大量に雇用されてきた物流労働者の解雇が始まるだろう。次にEV+IT化への社会インフラの整備が国家レベルで始まるだろう。そのため多額の税金が用いられるだろう。そのため、年金生活者への社会保障は「元が取れない支出」なので減らされる一方で、この国家レベルのインフラ整備に大資本が参入して大量の投資をするだろう。
 タクシー業界ではウーバーなどのようなフリーライドシステムを導入した新興企業が台頭する。企業がクルマをもっていなくともタクシー業ができるのだ。そしてシェアを奪われた従来のタクシー会社はその競争に勝てなくなってクルマを減らし、ドライバーを解雇せざるを得なくなる。
 これと平行して世界的にガソリン消費量が減るため、産油国の経済はそのままでは苦しくなるだろう。そこでオイルマネーで莫大な資本を蓄積した産油国の支配層は利益の見込めるEVやIT企業への投資を増やすだろう。その結果EVやITで世界を支配するグローバル企業はますます大きな利益を手にするだろう。超富裕層の世界経済支配はますます強固になる。
 一方で世界の大多数を占めるフツーの労働者たちは政府のインフラ整備への増税や企業での解雇に泣くことになり、年金で生活するフツーの高齢者たちはクルマを買い換えることもできず、相変わらず危険で厳しい状況の中で生活しなければならない。
こうして 世界はますます「格差」をまして行くだろう。
 こうした超富裕層の手にする莫大な富は、元はといえばそれらの大企業やその関連企業に雇用されたり、それらの企業に原料や資源を提供するために、また出来上がった商品を販売拠点に運ぶために毎日汗水流して労働する労働者が生み出したものであり、本来ならば彼らの側にあるべきものなのだ。
  それを「無償で」獲得し、それによって、ただその富を右から左へと動かすだけで莫大な富を積み上げていく一握りの人々と、いったいどちらが本当の地球の主人公なのだ!

|

« バルトリーニ氏のトークセッションへの感想に対するコメントにお応えして | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その1) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/210651/67244779

この記事へのトラックバック一覧です: 「クルマ革命」の動向とそれが意味するもの:

« バルトリーニ氏のトークセッションへの感想に対するコメントにお応えして | トップページ | 朝日新聞"GLOBE"特集「テクノロジーの世紀」をめぐって(その1) »