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2018年10月 4日 (木)

S. バルトリー二氏と小谷氏のトークセッションの概要(その2)

 そこでここでは小谷氏のトークへの批判に絞って書くことにしよう。

 小谷氏はいまの資本主義社会(小谷氏は市場原理主義と呼んでいた)の歪みを分かりやすく指摘しており若者受けする内容だが、私には問題の核心を突くにはほど遠いと感じられた。

 例えばケインズが2030年には人々は1日3時間しか働かなくてよくなると予言したと言われるが、これはケインズが資本主義経済の本質的矛盾を理解していないためこうした予測をしたということであって、もともと資本主義社会ではこのようなことはあり得ない。
  諸個人の労働が資本の増殖のための手段として用いられることで社会的生産と消費が成り立っているのが資本主義社会であって、そこでは労働力の再生産費である賃金と引き替えに資本家に買い取られた労働力は賃金に相当する価値よりいかに多くの剰余価値を価値の源泉である労働から搾り出すかが資本家としての根源的欲求であるのだから。
  またいかに労働手段(機械設備)や労働のプロセスが「合理化」されてもそれだけ剰余価値として獲得する部分が増えるだけであって、労働者は賃金奴隷状態から解放されることはなく、その労働は決して楽にはならず、つねに目一杯働かされるのが「資本主義的法則」なのだから。日本人は働き過ぎだと言われてもそうしなければ生活が維持できないからだろう。
 ケインズが提唱した「有効需要の創出」政策は、それまで労働の「合理化」によって生産力がどんどん上がって行ったにも拘わらず、増大する剰余価値はあくまで私有化された富として蓄積されるため、社会共有財とはなり得ず、労働者の生活を豊かにすることはなく、過剰化した資本が経済を圧迫していくという矛盾が増大していた社会状況において、国家的政策として打ち出されることで、労働者の個人的消費の増大によって過剰化した資本処理することを成功させた。このことは当時、「社会主義」圏の攻勢の中にあった資本主義陣営にとっては労働者の意識を階級的自覚から逸らし「豊かな生活」に向けさせることで有利な立場に立てるという意味でも大きかった。
  しかし国家が金融政策や公共投資などによって資本主義的経営を間接的にコントロールすることで社会保障や公共的事業などが増加していったにも拘わらず、労働者は相変わらず長時間労働から解放されることはなく、むしろ生活資料を買うための賃金上昇の要求が優先されていった。このような状況で労働組合も階級的意識を失わされ、賃上げや労働時間の短縮の要求(これ自体は間違っていないが)のみを行うようになり、やがては資本家企業の協力者になっていったのである。
  なぜならばそれは労働者の生活資料への支出が増大しなければ資本の増大が得られなくなるという状況を生み出したのであり、支配階級である資本家たちは労働者を「消費者」として祭り上げ、その消費欲をあおって行くことが自分たちの階級としての存続を保証することになるからである。
 こうして資本の成長を「経済成長」として普遍化し、それが労働者の消費拡大によってもたらされ、それがまた労働者の賃金上昇をもたらすという「好循環」があたかも資本主義社会の普遍的形態であるかのように言いふらしたのである。そうして労働者たちは資本家企業の一員としてその「成長」に「前向きに」協力・貢献することになっていったのである。
 しかしいまやこの「まやかし」はどんどんボロがでてきて破綻寸前となった。世界市場での競争が激化する中、終身雇用制による企業での「労働コストの無駄(長時間働いても労働生産性が上がらないという資本家的悩み)」が深刻となり、それに対処すべく「働きたい時に働きたい形で仕事にありつける」というふれ込みで拡大された非正規雇用は、低賃金で不安定で将来のない生活を大量に生み出し、若者たちは「いま」を楽しく生きる方法を探すしかなくなったのである。
  だからモノを買わない生活が拡がり生活資料商品の購買力を減少させた。その結果「経済成長」で成長するのはグローバル市場での競争に勝った大資本ばかりであって、フツーの人々の生活は豊かにはならない。
 そんな状態で「1日3時間労働」や「怠ける権利」など主張してみても、そこからは何も真の解決は生まれないばかりか、日雇い仕事でお金を稼ぎあとの時間は安宿でネットゲームで過ごすという「ネトゲ地獄」を増加させるだけなのである。
 また「内発的動機付け」を育成する教育もそれ自体としては良いことであるが、いまの社会では結局それは企業の仕事に「自発的に・前向きに」取り組んでいける労働者の育成として利用されて行くことになるだろう。
このことを当日参加していた多くの若者たちにしっかり理解してもらいたい。
(続く)

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