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2018年11月27日 (火)

GMのリストラとトランプの怒りに現れた矛盾

 今朝のABCニュースによるとアメリカのトップ自動車メーカーGMが経営難で主力モデルの一部を生産終了とし、国内5工場を閉鎖し、一万数千人の人員削減を行うそうである。これに対してトランプがGMの経営陣に「アメリカを代表する主力モデルの生産は続けるべきだ。国内の雇用確保に努力すべきだ。」と怒りをぶちまけたそうだ。

 ハーレーダビットソンもGMもトランプの保護貿易政策と移民阻止に便乗しようとしてかえって、資本家企業としての経営が難しくなった。これが資本主義経済の「法則」だからである。市場はますますグローバル化し、生産物も労働者も国境を越えて動き回っている。安い労働力の国々から安い部品や原料を輸入し、生産は外国人の低賃金労働(多くの企業は低賃金国に生産拠点を持つ)で行い、それによって資本家企業は「国際競争力」を付け、なんとか生き残っていくのである。
 またこうしたアメリカでは「斜陽」のハードウエア産業ばなりではなく「ドル箱」のIT産業においても大企業で優遇されるSEなどの頭脳労働者は壁にぶつかっているようだ。もともとこの分野の大企業では優れた頭脳の持ち主ならば国籍を厭わないが、しかも最近は「ギグワーカー」なるフリーのSEが世界各国から安い賃金で仕事を請け負っている。海外の「ギグワーカー」を斡旋する業者も大儲けしているらしい。こうなるとIT大企業で優雅な中産階級生活を営んでいた頭脳労働者たちも安閑としてはいられなくなる。
 さらには、自動車産業などでは常識となっている「合理化」、自動化されたロボットのラインにより生産労働者数を減らすことでコスト削減を図るという方法がいまはIT産業などの頭脳労働者の世界にも浸透しつつある。ソフトウエア開発の人工知能(AI)による「自動化」である。
 いまや頭脳労働者もハードメーカーの労働者と同じ運命に置かれているようだ。そうしなければグローバル資本主義下においては競争で負けてしまうからだ。特に一党独裁の強力なトップダウン資本主義国家である中国がその強硬な「リーダーシップ」によって国内労働者の格差増大をものともせず、「国際貿易の推進」を看板に、弱体化した西欧やアメリカ、日本の資本家企業をグローバル市場での競争から追い落とし、巨大中国マネーの側にインクルードしようとしているように見える。
 このような状況で、トランプがいかに声を大にして国境封鎖だの経済制裁だの貿易関税の引き上げだのと叫んでみても無駄というものだろう。「アメリカ株式会社」のCEOともあろうトランプが資本主義経済の「法則」を知らないなんて!
気の毒なのはそれに乗せられて、その結果割を食うアメリカの労働者階級である。
 だからいま、アメリカの労働者階級は「リベラル」だ「ナショナリズム」だという馬鹿げた対立に炎上するのではなく、自分たちの置かれた本当の立場をちゃんと認識し、互いに手を結び合わねばならないときなのだと思う。そしてそれは中国の労働者階級とアメリカの労働者階級の間でも同じ事が言えるだろう。マルクスが150年前に言った言葉を忘れてはならない。
「万国の労働者、団結せよ!」
 追記:GMのリストラに対してトランプは、これまで出していた政府補助金を減らす、と息巻いているそうだ。「オレの言ったことに従わないヤツにはバツを与える」ということだろう。しかしただでさえ赤字で経営難になっているGMへの政府補助を削減したらGMはつぶれるか、さらなる人員削減をせざるを得なくなるだろう。それこそトランプの言う労働者の擁護に反することになるし、それが資本主義経済の「法則」というものだ。「資本家大統領」失格だ。アメリカ(株)の従業員(国民)から「おまえは首だ!」と言われるぞ。

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