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2018年11月23日 (金)

自由市場とカリスマ的経営者の関係

 日産・ルノーのカリスマ経営者カルロス・ゴーン氏の「半端ない」所得隠しがマスコミを賑わしているが、ここでちょっと考えておきたいことがある。

 いま世界は自由貿易主義と保護貿易主義が対立しているという。それが半世紀前の、日本などの保護貿易によって護られた敗戦国が急速に経済力を回復して「成長」していた時代には、こうした後発資本主義国と、アメリカ・西欧などの既存の資本主義諸国との貿易摩擦として現れていた。アメリカでの製造業労働者たちによる「日本製品バッシング」が有名だった。 
  そして20世紀末から今世紀初頭にかけては、「社会主義圏」崩壊後に生き残った中国などの「社会主義国」が「社会主義市場経済」と称して資本主義経済体制を採り入れ、低賃金労働による格安商品を売り物にして国際市場に乗り出してきた。
  こうした国と既存の資本主義諸国との貿易摩擦が始まるかに見えた。しかし、それは既存の資本主義諸国が生活資料などの商品を中国などの低賃金労働国で作られた格安商品として輸入し、自国企業の工業製品に関しては中国に生産拠点を移すことで低賃金労働を活用できるため国際市場での価格競争にごして行けることが分かり、そうした企業への投資が盛んになった。
 つまり中国から安い生活消費財を輸入して自国の労働者が安い生活費でも最低生活ができる体制を生み、賃金水準を上げずとも実質的に「可処分所得」を増やすことができ、それが国内市場を活性化させる。しかも輸出面では中国に生産拠点を置くことで、運送費を入れても国際市場での価格競争に勝っていけるという算段でどんどん中国に投資する。その結果中国経済は急速に成長してあっというまに世界第2位の経済大国になった。彼らがいうところの「ウインウインの関係」である。
 そしていまや国際貿易で中国に押され気味のアメリカが今度は自国の産業を守るために保護貿易を主張しだしたのである。かつて中国の一党独裁体制での「社会主義市場経済」体制がもつ、保護貿易的側面をたたき、自由貿易体制へと押し上げてきたアメリカが、こんどは逆に「自由貿易主義」を押し出す中国にたいして保護貿易主義の盾を立てたのである。
 かつては「自由貿易主義」イコール「リベラル」であって保護貿易主義イコール「統制経済」であったがそれが逆転したのだ。
 いや正確には逆転ではない。なぜなら中国はますます強力な一党独裁体制を推し進めているしアメリカもいまや「リベラル」ではなくカリスマ大統領による半独裁体制だからだ。
 そこでさらによく考えてみよう。日本では高度成長時代は自民党一党独裁に近い体制であり、池田、岸、佐藤、中曽根などの半カリスマ的首相が資本主義経済の成長を牽引していた。そして中国では共産党一党独裁体制のもとでの強力なトップダウン体制で「社会主義市場経済」が急成長した。
 「自由市場」は自由な競争が原則であるが、その競争に勝ち残るためには強力なトップダウン体制が必須であり、カリスマ指導者が必要なのである。だからいまグローバル企業の経営者をはじめとして、国家レベルでもアメリカではトランプがそれをやっている。中国では習近平がそしてロシアではプーチンがそれを推し進めているし、日本の安部やフランスのマクロンもそれに類する存在だ。いわく「強いリーダーシップの指導者」が求められているというのである(本当は誰が求めているのかが大問題なのだが)。
  自由市場を経済的基盤とする「自由主義」とは競争に打ち勝たねばならず、一国が経済的に圧倒的に優位である場合(かつてのアメリカの様に)を除いて、「互角」に競争する状態では決して本来「リベラル」なものではなく本質的に「トップダウン」なのである。
 この矛盾の中で、トップダウン国家どうしが競争を激化されているのが資本主義経済の現状といえるだろう。そこでつねにその競争の「道具」として使われるのが労働者であり、カリスマ指導者を選挙で当選させるための虚飾のキャンペーンや「分かりやすい」スローガンが人気取りとして駆け巡り、辣腕な指導者が労働者階級によって選出される。「強い指導者に任せておけばいいようにやってくれるし、企業の業績もあがって労働者の賃金もよくなる」という「印象操作」のもとで労働者たちは指導者にすべてをゆだねる。支配層はこれを「民主主義」と呼んでいるのだ。
  そしてやがてはその労働者たちは強力な指導者が統率する「国家」に犠牲を強いられることになる。あるときはグローバル資本企業での大規模リストラ(ゴーンがかつて日産でやったように)という形で、またあるときは国家間の戦争に「愛国心」を刷り込まれた戦力として駆り出され戦場で死ぬ。
 労働者階級はもっともっと賢くならなければいけないと思う。さもないとこれからの世界で再び大きな悲劇がやってくることになる。「自由と民主主義」とは本来どのようなものなのか、ここでよーく考えねばならない。

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