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2018年12月15日 (土)

「市場経済原理」の根本問題について考える(その3)

 このように、市場経済社会とは、社会的生産物すべてが私的所有にもとづく商品として現れる社会であり、それらを生産するために日々働く労働者までもがその労働力を賃金と引き替えに買われる商品として扱われる社会である。
 この社会は、私的所有者間が平等で自由な商品交換によって成り立つことが「原則」とされているが、実際には生産に必要な手段(機械設備や原材料など)を所有する人々(資本家)が、労働力しか持たない人々(労働者)からその労働力を商品として購入して、資本家の意図のもとに生産手段と結びつけられた労働を行わせ、それによって生みだされた生産物は資本の私有物となることによって、資本家はそれを売ってさらに富を増加させるが、労働者つねに自分の労働力しか売りに出せるものがない、という形で社会的生産活動が行われており、基本的に平等ではない社会である。
 労働者たちは労働者として役に立つための教育(ここでもすでに受験戦争という形で労働力予備軍の選別が行われる)を受けたのち、今度は労働市場に出て、自らの労働力を商品として資本家に買ってもらわなければならない。いわゆる「就活」あるいは「就職戦線」である。
 ここでは労働力商品同士が市場で競争することになる。そこでの「勝利者」は如何に自分の労働力を高く安定した企業に買ってもらったか、ということであり、「敗者」はこの段階で「差別化」され、劣った労働力商品として社会的に評価されることになる。
 しかしこうして労働者予備軍内での激しい競争の結果、やっと就職した企業では、労働者の労働力は資本家の所有物であり、労働者はそれを資本家に売ることで(資本家と契約という形で)受け取る賃金によって「自由な消費手段購入者」となるが、その自らの社会的存在意義を表明する手段であるはずの労働力が資本家の支配下にあるため、労働における自己表現は資本家の自己表現となってしまう。労働の場においては完全に資本家に隷属した状態であり、本来の自由も平等もない。だから「消費者」として資本家の商品を買うことにおいて自己表現するしかない。
 こうしてこの社会では基本的に社会的生産の場において平等ではない関係が前提され、それによって「自由な市場」が成り立つというパラドックスが存在しているのだ。
 労働者は資本家から「消費者は王様である」などと持ち上げられて、資本家たちが労働者を使って生みだした生活消費財商品を購入し、「お客様」として扱われることで、「平等な社会」と勘違いさせられている。実は彼らが購入する商品は彼らの仲間の労働によって生みだされたものであって、それが資本家の所有物として市場で売られているのであり、いうなれば、労働者階級全体としてみれば自らが作ったものを自ら資本家から「労働力の代償」として受け取った賃金で「買い戻している」だけなのである。
 しかもその労働の過程で、生みだされる剰余価値部分はつねに無償で資本家の手に利潤をもたらし、それによってつねに資本家達は自らが必要とする生活消費財の他に生産手段や労働力を商品として買うことができ、それを用いて富を増やしていくことができるのである。このようにして資本家と労働者の関係は、基本的に不平等な階級関係として生産と消費のサイクルの中でつねに再生産されている。
 つまり「自由で平等な市場経済社会」とはこういう不平等な階級関係が前提となって成り立っているのである。
 だからいかに資本家代表政府(利己的思惑で動く各資本家達のうごきによって生じる矛盾や軋轢を社会全体として調整するために必要な政府——安倍政権やトランプ政権などはその典型)が、「雇用を促進する」とか「消費者の生活を豊かにする」とか「消費拡大によって経済を活性化させる」とか言っても、その本意は結局、この賃金奴隷という形の階級関係をいかに維持し、労働者階級の不満をいかに逸らしながら、資本の成長を図っていくかということに過ぎないのである。
 まず基本的にこのような事実を踏まえた上で、この社会が依って立つ「市場経済原理」の矛盾をさらに考えてみよう。
(続く)

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