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2020年2月25日 (火)

「市場経済」の矛盾について考える---その2:新型コロナウイルスと株式市場の動きをめぐって

ここで目の前に起きている事実をもとに市場経済の矛盾を考えてみよう。

 いまや「世界の工場」となった中国を発生源とする新型コロナウイルス肺炎の流行が世界中で起こり初めており、その影響で中国では多くの企業が仕事を休んでいる。そのためいまや世界中にサプライチェーンを張り巡らしている国々で中国からの部品や製品の調達が停止するとともに、世界一の巨大消費市場でもある中国では伝染を恐れて街に人影が薄れ、消費もガタ落ちとなっている。また新型コロナ肺炎が中国以外の国々にも拡散し始め、その影響で各国での人々の警戒感が強まっている。そのため、世界市場での商品や人の動きが鈍くなり、各国の株式市場は軒並み大幅に下落している。このままでは、ウイルスが侵入した国々での人々の生活は大きく影響を受け、日々の生活に必要な物資の供給にも影響が出て来そうだ。

 この状況を加速しているのが株式市場での投資家の思惑だ。世界中の生産と消費活動が連携し合い複雑なネットワークを形成しているいまの経済状況で、本来はいかに安定した生活資料の供給ができるかが経済における最重要課題なのだが、投資家たちは、自分達の私的利害にしか関心がないため、目先の損得で動く。その私的利害の目先の損得が世界経済を動かし、それがそのまま人々の生活に大きな影響を及ぼす。これが株式投資という形で資本を調達し企業を運営して利益を挙げようとする機能資本家と、その企業に自らの富の一部を投資して、その企業が上げる利益の分け前を頂戴しようと目論む投資家(本来の資本家)たちによって成り立つ現代の資本主義経済体制の矛盾として如実に現れている。

 ひとことで言えば、私的利害にしか関心のない連中のために、世界中の経済活動が支配されているのだ。世界中の生活者は彼ら投資家の私的な富の増大のために生活全体を支配され、振り回されているのだ。その市場経済という仕組みの根本に関わる矛盾が今回の新型ウイルスの拡散による危機的状況で極めて鮮明に現れたといってよいだろう。

 日本の安部政権は中国での新型コロナ肺炎の流行に対して、初動を見誤ったと言われているが、彼らの頭の中には新型ウイルス肺炎のもたらす市場経済的影響の方が重要であって、人々の生活を護るという意識はいつものように二の次であることがはっきり分かった。安倍政権はアベノミクスで大量の日銀券をばらまき、過剰な貨幣流通によって経済活動を刺激し、景気を良くしようとしたが、その弊害は国家の借金を増やしながら資本家達に利益をもたらすだけで、生活者たちは老後に備えた預金の金利がマイナスとなってなけなしの貯金もどんどん目減りしてゆくという形で如実に現れているのだ。

 愚策はすでにとっくの昔に失敗した。トランプのカリスマ音頭に踊らされて活況を呈していたアメリカ株式市場の波にのって日本の株式市場も活況を呈してきたが、その根無し草的本質がいまや明らかになりつつある。私的利害の思惑だけで動く投資家があたかも「雇用を生みだし労働者の生活を護る」かのように言うことがウソであったことが明らかになってきたからだ。彼らが「労働者の雇用を護る」のは企業が儲けを出し、投資家たちに大きな利益が得られる場合のみであって、その見込みがなくなれば投資家たちはその企業から手を引き、たちまち労働者は解雇され、貧困な状態に突き落とされる。資本家が新型コロナ肺炎の流行によって労働者が病気で働けなくなることを気にするのは、自らの富の源泉である労働力が確保できなくなり企業の存続が危うくなることが心配なのである。しかしこれは資本家が「性悪」の人間であるからでは決してなく、これが市場経済にもとづく資本主義経済の「法則」だからなのである。資本家は彼がどんなに思いやりがあり頼りになる人物であっても資本家である限りはこの資本主義経済体制の「法則」が人格化した姿なのである。

 社会の経済は本来ならば、社会全体で必要なモノをそれぞれの持ち場で働いて生みだしている労働者たちがともにその労働の成果を分ち合うための経済システムでなければならないはずだ。それをいまの資本主義市場経済では、本来社会的共有財であるべきもの(生産手段)を私的に所有する人々がその所有物を用いて、労働力という商品の持ち主である労働者からそれを「労働賃金」という形で買い取ることで、労働者に商品を作らせ、それを市場で売買することで利益を得て自らの企業を存続させながら私的な富を増大させるために、社会的に必要なモノを生産し消費する仕組みになってしまっている。そして表面上の「自由主義経済」とか「平等な市民」とかいうスローガンによってそのような事実が覆い隠されてしまっており、資本家も労働者もマスコミなどに煽動されて株式市場の動向にただただ一喜一憂しているのだ。アメリカの大統領選予備選で「左翼」といわれているサンダース氏が大きな支持を得ていることは、アメリカの生活者たちのこういった世の中のおかしさへの疑問や不満の直感的な現れであろう。

 

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