経済・政治・国際

2017年4月25日 (火)

なぜ労働者はトランプとルペンを支持するのだろうか?

 フランスの大統領選でマクロンがトップとなり、2位のルペンと決選投票に進むことになった。マクロンはEU擁護派であるが、既成政党のやり方には批判的であり、ルペンは反EU派であり、「フランス第一」をスローガンにしている。決選投票の行方はまだ分からないが、労働者の35%位がルペンを支持しているという調査結果も出されている。

 アメリカ大統領選でもラストベルトの労働者を初めとした労働者の多くが「アメリカ第一」のトランプを支持した。
 こうした状況はどこから来ているのだろうか?非常におおざっぱに言えば、労働者たちはEUやアメリカ民主党などに代表される「リベラリズム」が自分たちの立場を代表してくれなくなったと感じているからであろう。この傾向は日本でも民主党政権に期待した労働者たちが見事にその政策に裏切られ、その反作用で自民党安倍政権を支持する側に回ったことに現れている。
 アメリカ、フランス、日本それぞれのケースにあるこの現象の背景の違いは重要であるが、これらに共通するのは、真の意味で労働者の代表となる政党がなくなった、あるいは最初からないということだろう。そしてこれらの国々に共通することは、労働者が社会階層の中で大きな部分を占める、いわゆる「中間層」を形成していたことである。
 これらの国ではこの「中間層」の支持を得ることが国政にとって重要であったため、極端な国粋主義や民族主義は嫌われると同時に「社会主義」や共産主義というイメージも嫌われた。
 ところが、そうした国政運営で資本主義社会の成り立ちに内在する本質的な矛盾を問題にすることなく、基本的に資本主義経済を是認し、その発展を前提とした政策が採られ、その前提と範囲内での「左右」「中立」の違いが政党間の主張の区別になっていった。
 結果、アメリカでは民主党と共和党の主張の違いはだんだんはっきりしなくなり、結局、必然的に資本主義経済体制の様々な矛盾が表面化し、そのもっとも深刻な影響を労働者階級が受けることになったのだと思う。
そのことはフランスでも同様であり、安い賃金でも働く移民の流入や農業・製造業などのEU内で労働賃金が低い東欧の国々への依存度の増大などの結果、国内労働者の失業率の高止まりが常態となり、労働者の間でそれに何の手も打てない既成政党への不信感が高まった。
  しかし日本では、表面上失業率が低く、株価に象徴される経済状態も悪くないことや、野党のあまりにひどい状況や政権側の巧みな世論操作の効果もあって、安倍政権の支持率が維持されてきたといえるだろう。
 しかし、いまこれらの国々の「中間層」は明らかに分裂し、いわゆる「社会格差」が増大しており、下層化した労働者と上層部の富裕層化した労働者との間の、単なる収入の差だけではない階級的立場の分裂がはっきり現れてきていると思う。
 上層部の労働者たちは、資本主義経済体制の中に安住の場を見いだし、その立場から「リベラル」な主張を維持し続けている。彼らはもはや自分たちが労働者階級であることなど思っても見ない立場になっている。
 一方下層労働者たちは、そうした「リベラル」な雰囲気が嘘であることを知っており、「国際協調」や自由貿易主義が自分たちの犠牲の上に成り立っていることを直感的に感じている。
 こうした状況がいま「先進資本主義」諸国の労働者に自分たちの本当の味方を欲する切実な気持ちとなって現れており、その心情がトランプやルペンの主張に幻影を見いだしているのだと思う。
 しかしもちろん「自国第一」を叫ぶトランプやルペンは労働者階級の味方のフリをした右からの支配階級支援者に過ぎず、資本主義経済体制の矛盾を根本から克服しようとする立場では決してないし、結果として戦争の危機を招き、そうなればまたまた世界中の労働者が「自国のため」に互いに憎み合い殺し合わねばならなくなる。本来なら互いに連帯して戦争を防がねばならない同士なのに。

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2017年4月19日 (水)

トランプの「力による平和」の背景とその先に待っているもの

 (2017.04.20 一部修正)

トランプ大統領は、このところシリア内戦、対ISそして北朝鮮問題と続く緊張状態に「力による平和」をアピールしている。トランプは就任当初は「世界の警察官であることをやめる」と言ったオバマの戦略を引き継いだ様に見えたが、実はやはりアメリカの強大な軍事力で世界を支配しようという意思が強いことはこれであきらかになった。そしてその意向を汲んだペンス副大統領は日本を訪れ、安倍首相と「力による平和」で協調することを確認、同時に多国間貿易協定に代わる二国間貿易協定を推し進める意向を表明した。麻生財務相はこれに対して日本はアジアでの多国間貿易協定の主導的立場を採りたいと主張し、一定の抵抗を示したがおそらくそれに代わる何の展望もないのであろう。

 アメリカ国内ではアメリカ人の雇用を護るために外国人労働者の入国に厳しいフィルターをかけ、移民流入を抑え、アメリカ人にはアメリカ製の商品を買うようプッシュしている。その一方で日本や欧米の自動車メーカーなどにアメリカへの投資をプッシュし、それを行わなければ日本メーカーのクルマの輸入制限も辞さないとしている。さらに二国間貿易協定では日本からの自動車輸出などへの規制と同時にアメリカからの豚肉や穀物などの輸入についての規制を外せと迫っている。
 こうした一連のトランプによる政治的流れの中でいったい彼が何をしようとしているのかが見えてきた。
  「アメリカ・ファースト」はアメリカ第一主義と言われるが、要するに「アメリカは世界一強くて、世界の政治経済を牽引し、国内的には世界で一番裕福な国になる」ということであって、決してかつてのモンロー主義の様な「孤立主義」ではない。要するにアメリカ的世界を世界標準として認めさせ、そのリーダーとしての位置を力ずくで守りたいということであろう。
 これは20世紀には政治的にも経済的にも一大世界帝国であったアメリカが没落に向かうことへの恐怖と焦りの表れとも見える。かつて「パックス・アメリカーナ」時代の余裕の上に築かれていた「自由と民主主義のリーダー」としての顔の裏側にある国家エゴイズムが全面に出てきたようだ。
 しかしトランプの政策をこのまま推し進めればどうなるかを考えておくことが必要だろう。
かつて世界恐慌から抜け出し雇用を増やすために公共事業を拡大し、企業の投資を促し、過剰資本の処理形態である「無駄の量産(消費財の消費サイクルの無制限な拡大や軍需産業への莫大な支出、第3次産業など不生産的産業の拡大など)」によって産業を活性化させることで労働者の賃金が上がって行った結果、アメリカ的「豊かな国」が実現したが、いまこれが資本のグローバル化によって大きな壁にぶつかっているという事実をトランプは見ていない。それが崩れようといているときに、再びこの状態に戻ろうとするということは、まさに時代の逆行である。
 いまグローバル資本は世界レベルでの利潤追求のために資本の回転を加速させており、その中ではグローバル資本のもとで労働力を搾取される国の労働者が国境の内側にあってその国の生活水準ギリギリのレベルで働かされている必要があるのだ。
  そのことによってその国へのグローバル資本の投資が莫大な剰余価値を持った商品として国際市場に登場し、それによってグローバル資本家たちは莫大な利益をあげている。だからこうした国家間の「生活水準の差」がないとグローバル資本は利益をあげられなくなっている。だから本来インターナショナルに共通な立場に立つ労働者階級が連帯することはグローバル資本にとって最大の恐怖であって絶対にこれを防ごうとする。
 一方で生活水準の低い国々で働く労働者は、国境を越えて「豊かな国」に移住することでより良い生活を求めようとするのは当然のことである。しかし「豊かな国」の労働者はそれによって自分たちの職を奪われることを恐れ排外主義に傾く。それらの国の支配的階級はこの労働者たちの排外主義的流れを自分たちの利害を護るために巧みに利用しようしている。
 しかし他方でアメリカがトランプの「アメリカ・ファースト」をゴリ押しするならば、たとえ強大な軍事力をちらつかせながら貿易収支をむりやり改善させようとしても、アメリカ製品の国際市場での売れ行きは落ち、競争に負けるだろうし、競争に追いつくためには国内労働者の賃金を下げねばならなくなるだろう。その結果、製造業で利益を上げられないことを再認識したアメリカは、AIなどの知識産業、第3次産業やサービス産業など不生産的産業で儲ける資本家に依存せざるを得なくなるだろう。結果、一部の資本家や高給労働者以外のアメリカ国民は賃金が上がらないのに高いアメリカ製品を買わされることは嫌い、やはり安い外国製品に頼らざるを得なくなるだろう。 さらに生き残った稼ぎ手である知識産業やエンタテーメント産業にも外国から有能な労働者が簡単に入れなくなれば、次第にグローバル資本のアメリカ企業への投資は減っていくかもしれない。
 おそらく辣腕資本家でもあるトランプ大統領はそのあたりで自分の経済政策が間違っていたことに気づき、なし崩し的に軌道修正を行うことになるだろう。しかしその軌道修正は結局は一握りの大資本家が莫大な利益を上げ、アメリカの労働者階級はその「おこぼれ」で生活するというパターンに落ち着かざるを得ないと考えられる。
  その結果は、世界中にナショナリズムを流布させたことによる、「力による平和」をちらつかせる政治が横行し、世界からテロは減らず、格差はますます拡大し、国家エゴによる対立が激化する。
 そしてその先に待っているものは....... 戦争である。
 日本の安倍政権はこういうことに少しも危機感を持っておらず、オバマでもトランプでもアメリカ大統領のいうことには黙ってついて行くのである。世界市場でまだ強い自動車産業を助けるために農業を犠牲にし、小規模自営農業を大資本の元に集中させ、農民を農業労働者化させることになるだろう。そして憲法改定で国軍を保持し、「経済活性化」のためと称して軍需産業を拡大させながら、「自国のことは自国で護る」と見栄を張りつつ、在日駐留アメリカ軍の肩代わりを日本軍に行わせ、アメリカの軍事予算削減に貢献すること位しかできないだろう。
 

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2017年4月16日 (日)

山本地方創生大臣の暴言と安倍内閣の本性

 山本地方創生大臣が、記者会見で地方創生のためには博物館や美術館などの観光マインドのない学芸員の存在がガンであり、彼らを一掃しなければだめだ、と言った。

なんという驕りだろう!私にも学芸員の親類がいるが、この失礼極まりない発言にきっと怒っているに違いない。
  第一、観光で儲けるために学術的な知識を持って地道な研究に従事している学芸員の人たちを「役立たず」と見るほどに彼の頭の中は「経済最優先」なのだ。安倍内閣のほとんど全部がこんな人間がなのだ。要するにこうした発言の背景には首相自身の「安倍政権の方針に反対する様な公務員や教員は一掃すべきだ」という本音が聞こえてくる。
 どうも世界的にこういう独裁的な人間が「リーダーシップがある人間だ」とみなされて政府のトップに躍り出てきているようだ。まったく危険な時代になったものだ。こうしたおそろしいリーダーを選んでしまったのはわれわれ自身の責任でもあることを肝に銘じよう。

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閑話休題:北朝鮮問題を巡る「想定問答」

シリア問題に続いて、またまた「こうかもしれない」という仮想の「想定問答」です。

日本国首相執務室にて、
安部首相:「いま防衛省から情報が入ったが、北朝鮮でミサイルの発射があった様だが。どうやら失敗したらしい。トランプ大統領と連絡を取ってくれ」
秘書官:「はいすぐに」
まもなく部屋に戻ってきた秘書官:「トランプ大統領はいまフロリダの別荘にいるので、マチス国防長官と連絡を取りました。マチス長官は、いま調査中だが、おそらく北朝鮮は、トランプ大統領の意向をくんだ中国からの圧力を懸念しつつも、これまでの核保有国路線を堅持するという姿勢を見せたいので、威嚇の意味を込めて一発やったようだが、最初から「レッドライン」を超えないような範囲でこれを実行しようとしたようだ、とのことでした」
安部首相:「そうか、意外とキムも冷静だな。しかし国民にはこれが失敗していなかったら日本はどうなったか分からないとなるべく危機感を煽っておけ、これが憲法改正のおおきなバックアップになるかもしれないからな」
秘書官:「はい」
一方こちらはクレムリンの大統領執務室。
補佐官:「大統領閣下、いまアメリカと中国から情報が入り、北朝鮮がミサイルを発射したが失敗したそうです」
プーチン大統領:「そうか、トランプとは先日のシリアの一件で、連係プレーを試みたが、思ったほどうまく行かず、かえって中国の習とトランプを接近させてしまったが、トランプはそれが功を奏したと思っているだろうな。しかしそのミサイル失敗はミサイル発射プログラムへのわが軍情報部隊のサイバー攻撃によるものだとはまさか知るまい」
補佐官:「御意!」
プーチン:「中国はその件はあらかじめ伝えておいたが、トランプはおそらくこの後、北朝鮮をどう非核化しつつ話し合いのテーブルに着かせるかに関して何ら具体的戦略はないだろうから、結局中国頼みになるだろう。そこで、対中国関係も対韓国関係も悪化していて困った日本の安部首相がオレに何とか手伝ってほしいと持ちかけてくるだろう。そこでオレが習と手を組んで北朝鮮問題の調停の主役に躍り出るわけだ。トランプも手が出せまい」
補佐官:「さすがプーチン大統領閣下。抜群の戦略です」
プーチン:「うっはははは!」
ーーーこんなことではないといいですがね。

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2017年4月12日 (水)

こんな安倍政権がなぜ支持率が高いのか?

 シリアでのサリン(トルコ保健相が確認している)を使った反政府側市民への攻撃で、80人以上が殺され、多くが子供であったという事件に、アメリカがすぐさまこれをアサド政権の仕業として、政府軍側の基地をミサイルで攻撃・報復した。この事件に関しては、分からないことが多く、前回と前々回の私のブログでも書いた様な「想定」もあり得るという情況の中で、安倍政権はただちにアメリカの行動を支持した。

 その後イタリアで行われたG7では岸田外相も参加したが、ほぼ全回一致で、アサド政権の非人道的攻撃とそれに加担しているロシアを非難する声明が発せられた。もちろんロシアはこれに鋭く反発し、G7が化学兵器がアサド政権による仕業と決めつけたことに反対し、アメリカのミサイル攻撃を「侵略行為」だと決めつけた。G7諸国はトランプ政権の政策を「忖度」したのだろうか?
 一方、同時進行している北朝鮮の核ミサイル開発とアメリカ、韓国、日本への挑発的行為に対して、アメリカは、このまま行けばアメリカを攻撃範囲にとらえる大陸間核ミサイルが開発されてしまうので、いまのうちに北朝鮮を軍事的にたたく必要があると判断し、中国に北への圧力をかけるようプレッシャーをかけ、中国が有効な手を打てなければアメリカ独自に行動すると脅しをかけている。
 これに対応してアメリカの空母か朝鮮海域に向かっているが、日本の海上自衛隊がこれに従って「訓練行動」をともにしている。
 こんな危機的状況の中で、安倍政権は、南スーダンを巡る稲田防衛大臣の不透明な行為やとてもシビリアン・コントロールとは思えない一方的な行為や発言を繰り返す防衛大臣を容認している。つまり安倍政権はいまの危機的世界情勢を客観的にとらえることができていないのである。
 他方で森友学園問題で明らかになった右翼偏向思想を教育するための学校建設への実質的な莫大な資金援助と政治力の行使を行い、それを政治家による指示ではなく監督官庁側の「忖度」と見るのかどうかなどを巡る国会でのゴタゴタの過程で、事実の言い逃れをしながらも、教育勅語を学校教科に持ち込むこと自体は否定しないという発表を行った。
  文科省は、道徳の教科書に口出し、教科書会社に「伝統的日本のよき道徳」を強要する。教科書会社は安倍政権の意向を「忖度」して文科省に受け入れられる内容にする。
 こうしていま暗黙のうちに子供たちや若者におおきな思想教育の圧力がかけられている。先日の政府側の世論調査で、いまの若者の半数以上が「いまの生活はそれなりに幸福だ」と感じているという結果を出した。政府側の思想教育の成果が上がってきたのかもしれない。
 こうした若者の「保守化」の背景にはオリンピックやスポーツの世界で「がんばれニッポン!」キャンペーンがマスコミを通じてこれでもかこれでもかと行われており、「国民意識の向上」が図られていることも大きい。若者たちに「ニッポンはこんなに素晴らしい国だ!」という意識をどんどん植え付け、いまの日本が置かれているその真実の姿を見ようとしない雰囲気を作り出している。
 やがてこうした思想や「空気」のもとで育った若者たちは、いったん危機あらば、「祖国のために喜んで命を捧げます!」と進んで戦争に加わる兵士になっていくのかもしれない。
  「お国のため」という精神の吹き込みは、「自分という主体」を無にすることによって「自分」と同じような主体である他民族や他国の人々を殺しても良いという意識に置き換えさせてしまう、恐ろしい「洗脳」なのである。
 私を含めてあの戦争の時代を知っている人たちも残り少なくなってきたいま、若者たちにこの事実を分かってほしい。そして安倍政権のおそるべき欺瞞制を理解してほしい。

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2017年4月 8日 (土)

閑話休題 シリア毒ガス攻撃を巡る「想定問答」その2

一方こちらはその一日前のダマスカスのアサッド大統領宮殿。

補佐官: 大統領閣下、さきほどイドリブ県で空爆により化学兵器が使われたというニュースがアメリカから入りました。
大統領: ん?イドリブ県は反政府側の拠点があるので空軍機での攻撃を命じたが、化学兵器を使う予定はなかったはずだ。そもそもこちらはいまロシア軍の協力で反政府側を圧倒しているので化学兵器を使って世界中から非難を浴びるようなリスクは必要ないのだ。
補佐官: しかし、イドリブ県には以前化学兵器を全面廃棄すると宣言しながら、いつか使うべき時が来たら使えるようにと密かに残しておいた化学兵器貯蔵庫があるのです。
大統領: 知っている。いまは反政府側の巣窟になってしまった場所だが病院の倉庫の中なので彼らにはまだ気付かれていないはずだ。。
補佐官: はい、ところでいま新しい情報が入りました。わが空軍機の攻撃の際、発射されたミサイル一発がその病院に着弾したそうです。
大統領: うーむ、誤爆か!
補佐官: いえ待ってください。いまもう一つ情報が入ってきました。攻撃したのはわが空軍機ではなくロシア機だったようです。
大統領: 何だと。
補佐官: しかも攻撃は真っ直ぐにその病院をめがけて行われたようであります。
大統領: なにー! それではそのロシア機はあそこに化学兵器があることを知っていたのか! それにしてもなぜそんなリスクを冒したのか?
補佐官: どちらにしてもわが軍が化学兵器を使ってはいないと発表しましょう。
大統領: むむむ....。
ーーーーーーーーーー
 さて話変わってこちらはクレムリンのプーチン大統領執務室。
補佐官: プーチン大統領閣下、さきほどアメリカ大統領からの秘密情報により密かに知らされたイドリブ県の化学兵器貯蔵庫を爆撃し成功しました。
大統領: そうかアサッドは驚いただろうな。それにしても反政府側はアメリカに漏らした彼らの情報がまさかこんな形で返ってくるとは夢にも思わなかっただろうな、気の毒に。
しかし対外的にはこれは反政府側の仕業か反政府側が貯蔵していた化学兵器貯蔵庫をシリア軍が誤爆したことにすればいい。
補佐官: はっ!
大統領: おそらくトランプはわれわれとの秘密裏の連携作戦がうまくいったとばかりにすぐに予定通り報復に出るだろう。そうなればアメリカ大統領と私の「蜜月関係」などという噂は消し飛ぶであろうし、お互いに相手を気にせずに振る舞えるようになる。そしてアメリカは北朝鮮問題で中国との緊張が高まるだろう。そうなれば私は中国と接近しやすくなり、この問題でまた世界の主導権を握れることになる。
トランプは作戦が成功したと思うだろうがオレの方が一枚も二枚も上手だろ、ウハハハ......。
補佐官: 御意!
-----もちろんこれもフィクションです。まさかこんなことはないでしょうけどね、多分......。
それにしてもこれと似たような政治の駆け引きやだまし合いで人々は殺し合い、そしてもっとも弱い子供たちが犠牲になっていくのである。真実などどこにあるのだろうか?

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閑話休題 シリア毒ガス攻撃を巡る「想定問答」その1

シリアでの無差別毒ガス攻撃があった直後のある一場面

大統領補佐官: 大統領閣下、シリアでのサリン作戦、成功でした。

大統領: そうか、うまくいったな。あれはアサッドの仕業と言うことでニュースが一斉に流れたな。

大統領補佐官: はい。
大統領: フェイクニュースも使い道次第だな。ではすぐに計画通り次の手を打て。予定通りわしは中国の首相との晩餐会に行く。
大統領補佐官: 閣下、分かりました。では計画通りティラーソン長官にも次の手を打つよう指示致します。
ーー中国首相との晩餐会の最中に大統領のもとに次のようなメモが届けられた。
補佐官からのメモ:予定通りシリア基地へのミサイル攻撃を実行しました。すべてうまくいきました。これで中国や北朝鮮への強烈な牽制にもなるし、プーチンとの腐れ縁も絶つことができます。そしてオバマ外交との明確な差別化もできます。
大統領はこれを読んでニタリと笑い、晩餐会が終わった直後に記者発表会見に臨んだ。
大統領発表: 一般市民そして小さな子供や赤ん坊にさえ毒ガスによる残忍な死を与える許しがたい攻撃がアサッド政権によって行われた。これに対してただちにわれわれはその出撃拠点となった基地にミサイル攻撃を行った。2度とこのような非人道的な攻撃をさせないための警告である。<以下ニュース参照>
そしてこのニュースは世界中で大々的に報道された。まもなく日本の安倍首相がこれを支持すると表明、そしてアメリカのクリントン元大統領候補もこれを支持した。
「国際社会の正義」のためであると。
-----もちろんこれはフィクションです。事実ではありません、多分......?
(その2に続く)

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2017年4月 3日 (月)

Nスペ「爆問VSトランプ異例の経済政策で何が?」での問題

 昨夜のNスペ「爆問VSトランプ異例の経済政策で何が?」ではトランプの経済政策で今後世界経済はどうなっていくのかについて世界の識者の見解紹介や日本の若手気鋭のエリートたちが爆問の問いに答える形で展開された。

 若手エリート学者の見解はトランプの政策はかつて1930年代後半に行われたアメリカのニューディール政策(理論的にはケインズが基盤となった)と1980年代後半に行われたレーガン大統領による「レーガノミックス」(理論的にはフリードマンが基盤となった) の「いいとこ取り」をしたものだと言っていた。この考えに同席していた他のエリートたちもほぼ同意していたようだったが、それを「資本主義の危機」ととらえるか「チャンス」ととらえるかの違いがあった。フランスの社会学者マイケル・トッドなどは前者の立場であり、アメリカの識者では後者の立場の意見が紹介された。
 しかし、問題はニューディルがその直前にあった世界的金融恐慌に対する克服策としての「国家主導型」資本主義への軌道修正であり、その後第2次大戦で勝利し、このアメリカ式の国家主導資本主義が本格的に軌道に乗りイギリスなどもこれに従った戦後資本主義の再興期があり、その中で日本やドイツも経済成長を遂げたのであるが、その後1970年代になって、日本やドイツに追い上げられたアメリカ、イギリスでこうした国家主導型資本主義の矛盾が顕著になってアメリカの製造業が衰退をはじめ、イギリスでは「イギリス病」と言われる慢性的な不況が続いたあとで、その克服策として社会保障や軍備費などでの国家の負担増を減らし「自助努力」を旨とする「新自由主義」を旗印としたレーガノミックスやサッチャーの経済政策が行われたのである。
 そしてその後、「社会主義圏」崩壊で一人勝ちしたかに見えたアメリカがそれにも拘わらず経済的も軍事的にも失敗することでこの両方の「修正資本主義」が破綻したのが今日のアメリカであるといえるだろう。
 そうなればトランプの政策は「いいとこ取り」などではなく、単なる「寄せ集め」あるいは「つぎ当て」策としか言えないだろう。
 自由貿易主義はもともと財の私有とその商品としての売買の自由を旨とする資本主義の基本思想の上に世界市場を前提とした表現であり、この資本主義的「自由」が実は矛盾の根源でもあるのだが、オバマまでのアメリカ経済の理想は完全な「自由貿易」が世界資本主義経済の普遍的姿であり、国家はそこで生じる問題を調整する立場であるということであった。これは基本的に「新自由主義的」ともいえるが、一方でこの「新自由主義」だけでは社会保障や労働者の失業問題などは根本的には解決できず、そこに必然的に国家が介入せざるを得なくなる。オバマケア問題はこの矛盾に直面した。しかしそれにも拘わらず社会的格差は増大の一途をたどったのである。
 資本主義的「自由主義」と「国家介入」の両極を振り子のように動くのがいまの資本主義の姿であるといえるだろう。
 トランプはふたたび「国家介入」に振れたが、今度は「世界資本主義の先導者」としてではなく、「自国第一主義」であり、他国との摩擦も辞さないという強行な政策である。これはある意味でアメリカ弱体化の表れと言えるが、一方では強硬手段で国内労働者の雇用を増やすという意味で国内の失業者には受けが良いであろうが、他方で関税障壁など他国との摩擦を辞さないという政策でアメリカの国際貿易収支は悪化するだろう。
 なぜならその政策は相手国からの経済的「報復」を受けるだろうし、それを圧力によって押し返すなら国家間の政治的亀裂が生じ、国内の労働賃金の水準が高いがゆえに世界市場での「メイドインアメリカ」は競争に勝てず、どちらにしても貿易収支は悪化し、国内の経済も悪化することになり、一時的に失業を免れた労働者は再び失業することになるだろう。
  しかも今度は大規模な不況に襲われ、これが引き金となって世界資本主義経済は大恐慌に陥り、いよいよ末期的症状を呈することになるかもしれない。最悪の場合、各国で経済のゴリ押し政策をバックアップする軍備増強の競争となり「第3次世界大戦」もありうると思う。
 そうなる前にこうした「出口のない状態」の出口を見いだせるかが問題だ。

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2017年3月21日 (火)

グローバル資本の矛盾(自由貿易市場において分断される労働者階級)

 20世紀末には、世界を支配するグローバル資本体制に反発する独裁国家や過激な宗教集団による挑発が相次ぎ、それに対抗するためにアメリカが中心となって引き起こしたイラク・アフガン戦争という形で噴出した。これは国際的なテロや民族的対立を巻き込みながら、今日の中東の混乱につながり、それに加担する勢力や国々との間で複雑化した対立構造を生み出しその犠牲者はすでに数十万にも達していると言われている。これは一方ではアメリカを中心とした陣営にとって「社会主義」という宿敵を失ったという意味で「錦の御旗なき戦争」であり、同時に他方でグローバル資本市場の支配にむりやり引きずり込まれた非アメリカ的文化圏に生活する人々によるその支配への抵抗でもあったと考えられる。

 アメリカの若者たちもこれらの戦争の「正当性」に疑問を持ち、やがてそれを推進したブッシュ大統領は政権の座を追い落とされた。そして時を同じくしてアメリカ型資本主義経済は「消費者金融」の破綻から始まった「リーマンショック」という形でその矛盾を爆発させて行き詰まってしまった。その後に登場したオバマ政権は「自由貿易」を推進させグローバル市場でのアメリカの優位を保つことで経済の立て直しを行い、同時に国家予算にとって大きな負担となっていた東西冷戦で肥大化した軍備の縮小を進めた。そして格差が広がる社会での貧困層の不満解消ため「オバマケア」などの救済策を取り入れようとした。しかしそれはやはりアメリカ型資本主義路線の延長上にあったため、グローバル資本特有の矛盾から逃れられなかった。

  アメリカとEUそして日本などの資本主義諸国ではこれまでそれぞれの国内で国家的に重視される産業がグローバル資本の競争に晒されることで成り立たなくなることを恐れ、特定の分野に関税障壁を設けてきたが、ここに来て文字通り資本の回転と流通を遮る国境は取り払われ「自由貿易」が目指されようになった。しかし、それら自由貿易を主張するグローバル資本が支配する各国の労働者階級側には賃金格差を利用するために事実上国境の壁を高くする必要があるという矛盾が顕在化した。一方で「国境を越えた自由で平等な商品取引」を主張しながら他方で自国の労働者階級にはナショナリズムを注入することで「国民的結束」を促し、国境を越えたインターナショナルな階級的連帯を阻止しようとする。これがグローバル資本の本質的矛盾であり特徴である。

  そのことはEUではシリア内戦から逃れヨーロッパに移住しようとする難民問題に顕著に顕れた。EU域内でさえ、それを構成する国々の間で労働賃金の差があり、一方では労働賃金の安い国から高い国への労働者の移住が進み、他方ではまた西欧の有名ブランド商品の生産拠点が労働賃金の安い東欧の国へと移されていった。実際は賃金の安いブルガリアで作られていてもフランスの有名ブランドならば市場では実際の価値より遙かに高価に売れる。これが「ブランド価値」という名の「付加価値」である。
 そこにシリアや中東からの難民がどっとEUに押し寄せることでEU域内では難民を阻止するため壁が作られる国々と、それに反対して人手不足を補うために賃金が安くても働く難民を新たな労働力として受け入れようとする国々が対立するようになった。
 アメリカでは、メキシコをはじめとして中南米諸国からやってくるヒスパニック系移民とアフリカ系黒人たちが社会の底辺でのきつい労働を低い賃金で働く労働者として必須の存在になっている。その一方で自動車産業やコンピュータ産業などではグローバル市場での競争力をつけるために労働賃金の低いメキシコや中国が生産拠点となりそれらの国で低賃金の労働者によって製品が製造される。そのためアメリカ国内では高賃金で単純労働に従事していた白人労働者たちは職を失っていった。彼らは「アメリカ人」としてのプライドも傷つけられたのである。
 移民を受け入れるか拒否するかは決して「寛容と非寛容」の問題などではなく、純粋にグローバル資本主義経済の論理の問題なのである。
  一方日本の場合はこれとは違って、主として国内での長時間労働の常態化と非正規雇用による低賃金労働が日本におけるグローバル資本の世界市場での競争力を支えている。
 そして「アメリカ・ファースト」を叫ぶトランプの登場である。トランプは軍事的にも経済的にも行き詰まりを見せていた「リベラル」派オバマ政権に取って代わって排外主義的主張によって大統領になった。
 トランプはアメリカが「世界の警察官」であることをやめると言いつつ巨額の軍事予算増強を図る。またメキシコとの国境に壁を築き、不法移民の流入を防いで国内の雇用を増やし経済を活性化させると言いながら、グローバル資本の論理に反するような保護貿易主義を採り、かえってグローバル市場でのアメリカを不利な立場に追い込みつつある。
 しかしアメリカの労働者階級の多くの部分はトランプを支持し、彼が労働者の味方であると信じ込んでいる。
 トランプは、ある意味でヒトラーと同様、労働者階級にナショナリズムを吹き込むことで資本主義経済の矛盾を覆い隠し排外主義的な方向に目を向けさせ、強大な軍事力を背景にグローバル市場に圧力をかけようとしているかのようだ。それはグローバル資本主義のもう一つの顔である。そこには相変わらず労働者たちを深く考えさせない仕組みが働いており、そのために利用されきたマスコミを逆に敵に回すかのような振りを見せつつ、巧みにそれを操作しようとしているようだ。
 ヨーロッパでもドイツなどEU主導グループに代表される「リベラル派」的政策への反抗として急成長した「ポピュリズム」グループが注目されている。オランダ国会議員選挙で主導権を握るかもしれないと言われていた排外的「極右派」ウイルダース党首率いる自由党が主導権は取れなかったものの第2党に進出した。次はフランスの大統領選が焦点である。一方BREXITを選択したイギリスではスコットランドが独立への国民投票を再度強行すると言いだしメイ首相と対立している。
 トランプの政策は今のままでは成功しそうにないし、EUから離脱したイギリスもこの先多難だろう。問題はそれら欧米資本主義社会の「ポピュリズム」が頓挫した後である。既成「リベラル派」が政権を奪還してもそれは決して長続きしないだろう。なぜならそれは同じ穴のムジナなのだから。そこに軍事力の増強をバックに世界市場の支配を目指す中国やロシアが噛んでくることで、世界はますます危機的な状況になりかねない。
 アメリカでもヨーロッパでもそして日本でも労働者階級はいまや袋小路にはまって崩壊寸前になっているグローバル資本主義の元で、いまだに繰り返されるポピュリズム的ナショナリズムとその反面であるリベラリズムへの回帰という振り子の様な運動から抜け出すことができず、本来必要なインターナショナルな階級的連帯からはほど遠い状態にある。このままでは歴史は前に進まない。
 

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グローバル資本形成の過程(その2:大量消費社会という麻薬の形成)

 こうして資本主義経済体制でのグローバルな市場競争とその対立の物質的根拠である国家という資本の利害を護る壁を挟んでの労働者階級階級・農民の戦場への総動員という矛盾が20世紀前半の世界を特徴づけていたといえるだろう。

 一方、それまでヨーロッパとは一線を画して急速に発展してきたにも関わらず、1930年代には過剰資本がもたらす経済恐慌によって危機に陥ったアメリカ資本主義が、経済政策の抜本的修正を打ち出すことによって息を吹き返し、土木インフラ産業や軍需産業などを通じて行う過剰資本の処理方法を確立させていった。そのため第2次大戦ではこのアメリカ資本の生み出す巨大な物量の軍事力によって「自由主義」陣営が援けられ、戦争を勝利に導いた。それは核兵器による人体実験ともいえる広島・長崎の惨劇を経て、3つの陣営で数千万の犠牲者を生んで終わった。

 そして戦後はソ連型「社会主義圏」と、アメリカ型資本主義を中心とした「自由主義」陣営の対立する東西冷戦時代がやってきた。それはつねに核戦争の危機をはらみながら、その一方でそれを可能にした軍事技術の応用が生み出した「もう一つの果実」である高度な技術による耐久消費財などの民生機器商品を中心とした大量消費社会という新たな過剰資本処理システムによって資本主義陣営を再び活性化していった。このシステムは国家が国内総資本の立場で中央銀行での貨幣発行量や公定歩合のコントロールなどを通じて、資本蓄積が維持される範囲内で労働賃金を少しずつ高騰させていくことにより労働者に商品購買力をつけさせると同時に貨幣価値を少しずつ低下せせていくインフレ政策によって間接的に労働賃金と資本蓄積のバランスをとるタイプのアメリカ型国家主導型資本主義経済として定着していった。

 一方ソ連圏では、アメリカと対抗するために核を中心とした軍事力の開発が国家の大目標となったが、その一方で労働者の生活資料や生活状態そのものはアメリカに遠く及ばない状態となっていった。スターリンの後継者である党官僚の独裁体制による「計画経済」の元で、ノルマ化された労働を行い、雇用や社会保障の面はさておいても労働の主体性や歓びは失われ、トップダウンな政治による労働者階級の無力化が進んだ。

 またアメリカでは戦後一時期知識人や労働者の間に浸透していった「社会主義」的思想が、いわゆる「レッドパージ」によって駆逐され、巨大な経済力によってもたらされる「消費」の歓びに労働者たちは呑み込まれていった。そして社会主義や共産主義は「悪魔の思想」とされるに至った。
 そこでは労働者が生産過程で労働を搾取されるだけではなく、同時に「消費者」として、生活資料を中心とした商品を消費させることで資本に利潤をもたらすための手段とされた。 こうして大量の生活資料商品の消費や娯楽の消費がアメリカ的大衆社会を形成していった。
  それは「消費者」こそが王様であって、「消費者」は何でも自由に消費できるし、わがままな発言もすることができるという意味での「自由社会」である。それは労働を資本に支配された「賃金奴隷」としての労働者が資本から与えられた「麻薬としての消費」であると言ってもよいだろう。労働者階級に「社会主義」からの影響を受け階級意識を目覚めさせないためという意図の元で行われた資本主義社会の新たな変貌であったともいえるだろう。
 そこでは広告や宣伝そしてマスコミが社会的に大きな役割を持つ様になり、大量消費を生み出すためにあらゆる手段が用いられ「マス社会化」現象が生まれていった。そこからは「物事を決して深く考えない大衆」が大量に生み出されていった。それはいわば労働者階級としての魂を抜かれてしまった「消費マシーン」であった。この状況が現代的なポピュリズムを生み出したともいえるだろう。
 やがてアメリカ型の資本主義社会がドイツや日本という敗戦国を含めて西側諸国を支配して行き、ソ連型政治・経済体制が行き詰まる中で、この「アメリカ的消費の自由」がグローバル・スタンダードとなっていき、世界の目指すべき目標となったのである。
  この過程で1960年代にはかつての敗戦国ドイツや日本がこのアメリカの支配下に置かれながらも敗戦でのゼロリセットから立ち上がることで急速に新たな資本主義的生産体制を構築し、このアメリカ的資本主義の生み出した新技術の成果を巧みに導入し、瞬く間に「軍事力なきアメリカ型資本主義経済」を成長させていった。それは主としていわゆる民生機器を含む耐久消費財商品の生産であり、その量産と大量消費による資本の蓄積を目指すものであった。
 こうして1970-80年代には自動車、精密機器、家電製品などの分野で日本とドイツは世界市場での覇権を握っていった。
 しかしその一方で世界経済全体が「過剰な(つまり無駄の)生産」を前提とした生産体制になり、経済成長という名目で資本の蓄積を進め、その「おこぼれ」的税収や労働者の生活費から搾り取る税金によって社会保障など公共的予算を政府がひねり出すという社会となった。「経済成長」が続けば雇用が増え、労働者は安定した生活を営めると言われ、労働者階級は「消費の麻薬」にどっぷりつかった状態で「景気の活性化」を望みながら「賃金奴隷」の立場を永続化させられる。だから労働組合も雇用の増大と賃上げは要求するが決して労働者階級への権力移譲を主張しなくなった。その一方で過剰資本は過剰消費として消化され、過剰な生産が資源の枯渇や環境汚染や地球規模の悪化を促進させていった。
 こうした中で、1990年代になって日本では「バブル経済」と言われた資本の過剰状態が限界となってまず不動産市場や金融・証券市場が行き詰まり、続いて製造業やサービス産業などが不況に陥り失業者が増大した。一方アメリカはコンピュータ技術の開発をテコに情報技術の分野で巻き返しを図り、「IT革命」といわれる状況を生み出した。
 その結果、アメリカなどでは情報技術に携わる頭脳労働者が不足する事態を招き、同時にこの頃から台頭した中国などの後発「国家主導資本主義国」が安い商品で世界市場に進出する中で、アメリカ型資本主義の量産体制で求められるアッセンブリー労働などの単純労働力は圧倒的に賃金が安いそれらの国々に求められるようになっていった。そのためアメリカでは多くの製造業でベテラン労働者が職を失なっていった。一方で、若い頭脳労働者たちの生み出す「知財」が世界市場での武器となっていった。
 こうして"Designed in USA assembled in China"という形で一つの労働生産物を生み出すためにもっとも労働生産性が高くしかも安い労働コストで済むような構成で多くの国々に配置された労働者が資本に使われるという国際的分業形態が進んだ。日本などでは国内での生産の「合理化」が進み、量産企業ではロボットが労働者に取って代わるようになって行った。
 20世紀末には資本主義の「宿敵」であった「社会主義圏」が国内産業の不振からその莫大な軍事維持費がまかなえず、労働者の生活もままならなくなってくるという内部矛盾が限界に達して崩壊した。それにより「自由世界」を名乗るアメリカ型資本主義は旧社会主義圏にも進出しそれを市場の一部として取り込むことで文字通りグローバル・スタンダードとなり、世界を支配することになったのである。
 グローバル資本は多国籍化された企業で運営され、世界各国での税制や生活水準の違いを巧みに利用してもっとも効率よく資本の増殖と蓄積を行える体制でその拠点を世界各地に配置し、互いに市場での覇を競っている。しかし、それによる重大な矛盾と危機がやがて顕著になっていった。

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